15歳の20人リレー
□本当の友情
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夏が過ぎ、冬が過ぎ、桜の季節がやってきた。
いよいよ、卒業だ。
3年間過ごしてきたこの校舎とももうお別れ。
友達も、誰1人として私が進学する高校には来ない。
私が嫌いなあいつを除いては。
幼稚園の時から、私をいじめて10年。
やっと、そのあいつ、サエから離れられると思ったのに……。
と、そこにさやかが声をかけてきた。@】
「ねぇ、春休み、いっぱい遊ぼうよ。その……。高校離れちゃうからさ」
「うん。そうだね」
私は、適当に答えながら、
「高校離れちゃう」という言葉に、A】内心うれしさを感じながらも、B】
でもあいつが来るんだよなぁ、と思った。
「あーうぜぇ」
「……えっ?」
しまった。つい口に出てしまった。C】
よりによって、遊びに誘ってくれたさやかの前で言うなんて。
さやかは、D】
「ごっ、ごめんね……。私、うざいのがとりえだから……」
しゅんとした。E】
「よく分かってんじゃん」
内心そう思いながら、
「違うよ。そんなことないって!!」
などと言う私。F】
あーもう何だろう。全然分かんないや、自分……。G】
その時、あいつがやって来て、さやかに話しかけ始めた。
話の内容は……あいつがさやかを遊びに誘ってるらしい。
さやかとあいつは、むこうへ行ってしまった。H】
「はぁ……。何で私っていつもこうなんだろう。最悪……」
そう思って、私も遠ざかった。
放課後、家に帰り、玄関を開けると、
「パーン!!」
クラッカーの音が鳴り響いた。
ビックリして顔を上げると、さっきの2人が笑顔でこっちを見ていた。
「……一体、何??」
「何って、今日はあんたのI】誕生日!! それに今までのお礼。今日は思いっきり楽しんでってば」
と言われて、私はうれしいのかビックリしたのか分からなかった。
ふいに今までの自分が嫌になってきた。
「何で彼女達を嫌ってたんだろう。こんなにやさしいのに……」J】
自己嫌悪で暗くなっていると、2人は、
「ホラホラ、何暗い顔してんのよ!! 今日は、めいっぱい楽しもう!!」K】
私は、2人にものすごく感謝した。
泣いているのか、笑っているのか、分からなかった。
そのくらい嬉しかった。
「まさか、卒業の前に、こんなサプライズがあったなんて……」L】
私は、『おめでとう』の文字が書いてあるケーキのろうそくを消して、
2人からプレゼントを貰った。M】
「大丈夫?」
2人が私に聞いてきた。
「何で?」
と私が聞くと、2人は、
「だって、涙が出てるよ」
と答えた。N】
顔に手をやると、涙と鼻水でぐしょぐしょになっていた。
知らず知らずのうちに、泣いていたのだ。O】
プレゼントを開けてみた。P】
そこには、2人のメッセージ入りのキーホルダーが入っていた。
『離れていても、ずっと親友だよ!(さやか)』
『大好き!(サエ)』Q】
私は、このキーホルダーを今も手放さずに持ち、
悲しいときつらいときには、これを見るようにしている。
大学受験を1時間後に控えている今もだ。R】
正直、受かるか分からない。
でも、2人と一緒の大学に行きたいからがんばってきた。
私の成績では厳しいらしいけど、そんなの関係ない。
絶対に受かってみせる。
この大学には昔っから憧れてたし。
高校生活を悔いなく過ごしたから、大学受験だって、やってみせる。
そう誓って、受験会場のこの大学の門をくぐった。
合格発表の日。
久々にさやかに会った。
受験の日は、場所が違って会えなかったんだな。
彼女は、あまり変わってなかった。
変わったといえば、身長が伸びたことと、
顔が少し大人っぽくなったことだ。
サエはいつもと変わらずだ。
「やった!! 3人とも合格だよ!!」
さやかが言った。
その言葉を聞いた瞬間、私の目から涙がこぼれていた。
2人の前で見せる、2度目の涙だ。
「よかったね。これからは、ずっと3人でいられるね。久々に、家に来ない?」
さやかがまた言った。
嬉しかった、一緒にいられることが。
私は、本当の友情なんて無いと、あの日までずっと思ってた。
でも、ここに在った。
この手の中のキーホルダーは、その証だ。S】
2008.3.20 木 up 編集