15歳の20人リレー

□祈りの輪
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夏がすぎ、冬がすぎ、もう卒業式も終わり、

春が来て、高校の入学式の日のこと。

私の隣には、小さい頃からずっと幼なじみだった「ユウ」がいる。

入学式が終わって、私達は近くのマダドナルドに行った。

こうして食事をするのはめずらしくも何ともない。

私はいつものチーズバーガーをたのんで、ユウはいつものてりやきバーガーを頼んだ。

そしてユウは必ずと言っていいほど、四角マロンパイを妹へ買って帰る。

ユウの妹は小6で、今は病気で入院している。

なんていう病気かは知らない。

今日は私も一緒にユウの妹の美咲ちゃんに会いに行った。

美咲ちゃんは、4人部屋の左の1番端のベッドの中で、人形みたいな顔をして眠っていた。

美咲ちゃんは、きれいな黒いロングヘアーで前歯がちょっと欠けている。@】

でも、ユウと同じで、美人な妹だと思った。

そうやって、いろいろ考えていたら、美咲ちゃんが起きて、

「おはよう」と言ってきた。

ユウは、

「おいおい、朝じゃないよ」

と言った。A】

「う、うーん? 今何時? お姉ちゃん」

美咲ちゃんは伸びをしながらユウに尋ねた。B】

「もう夕方の5時だよ」C】

「わー、寝すぎたなぁー。頭痛い……」

とか言いながらまた布団にくるまった。D】

「安静にしてるんだよ」

とユウは言って、美咲の枕元に四角マロンパイを置いた。

ユウは何て優しいお姉ちゃんなんだろう……。E】

「でも、毎回毎回同じもので嬉しいのかな……。

新しく五角マロンパイも出たから、そっち買ってあげればいいのにね」F】

と思うこともあるが、喜ぶのだからいいのだろう。



ある朝、またユウと一緒に病院に行くと、めずらしく美咲ちゃんは起きていた。

「おはよう」

と私が言うと、G】美咲ちゃんは悩んでいるような顔で、

「……おはよー」と言った。

聞くと、今の病気を治すための、とても大きな手術をするらしい。

あと1ヶ月後に。H】

しかし、その手術は成功する確率が40パーセントほどしかないらしい。

まだ小六なのに……。



その夜、私は帰ってI】修道院のシスターたちと美咲ちゃんのためにお祈りした。

私は修道院に住んでいるのだ。

祈った。

そして祈った。

そしてそして祈りまくった。J】

「天と地と聖れいのみなによってアーメン」K】

私はその日から、ずっと祈り続けた。

かわいらしい美咲ちゃんの手術が成功しますように。

私は美咲ちゃんの顔を思い浮かべた。

ちょっと前歯の欠けた、かわいらしい顔。

大人になったら、あそこに、タバコをはさむと、

手を使わなくてもいいから便利だ・・・。

あ、雑念、雑念・・・。失敬。

私は、また祈りに集中した。L】

最近私は発想がオヤジくさいと、ユウに叱られていた。

みなさん、今のは忘れて下さい。



そして、運命の手術の日……。

私のこころは落ち着かなかった。

それは他のシスターも同じだろう。

神さまは、私たちに安心させるすきを与えてくれなかった。M】

「美咲、大丈夫だから。」

ユウは美咲ちゃんの頭をなでながら、やさしく笑っている。

しかし、手は小刻みに震えていた。N】

美咲ちゃんも不安でいっぱいの表情を浮かべながら、手術室に入って行った。O】



もう手術が始まってから4時間経っている。

シスターたちも交代で病院に来た。P】



それから早くも7時間くらい経ったころだろうか・……。

手術室のランプが消えた。

扉が開き、担当医と思われる男が、手袋をはずしながら出てきた。Q】

その担当医は私たちに向かって、

「手術は成功です。」

と言った。R】

良かった……。

ホッとしてみんなイスにもたれかかった。



しばらくして、美咲ちゃんと会ってもいいと言われたので、

美咲ちゃんの病室に向かった。

美咲ちゃんはにっこりして、

「おはよー!」

と言った。S】

2008.3.22 土 up 編集

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