お題場(4月) 指輪×本棚

□『恋のうた』  ゆうが
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本棚の後ろに隠した君への

永遠の愛の誓いの印を、

君はもう気づいてくれているだろうか





 

「ちょっと、そこ退いてよ」



邪魔でしょ、って君は付け加えて

僕を視界から消そうする

ちょっとひどいんじゃないかって僕は思うけど

それでもやっぱり、君が好きだから



 


「最近、本読んでるとこみないけど?」


「時間がないのよ」



君はそう、いつも忙しそうに

この小さな世界をどたばた走り回ってる

でもそれは僕にとって、これ以上ないほどの微笑ましい事なんだけどね





「たまには何か読んだら?」


「でも、殆どあるのは読み尽くしたわよ」



君の好きなほんのり甘い、恋愛小説に

少し夢世界を加えたファンタジー小説

 

飽きたとさえ言わないけれど

何度も繰り返し本を手に取るから

どの本のページも最近は古みを帯びてきたように思える




「昨日、本を一冊だけ買ってきたよ」

「なぁに?」

「冷静と情熱のあいだ」



あらそうなの、って君は幼いこどものように小走りで本棚に向かう

その後ろ姿さえ

妙に愛おしい




君がその本を手にとって

戻ってきて あら、びっくり




目を真っ赤にさせて

声をすこし枯らして




「どうして泣いてんの?」


「ばか」



そしてその君の唇に口付けの雨を降らせる




君の手をとって

想いをつたえて




でも、これ以上

君には泣いてほしくなんかないな


君の涙がみたくて

僕は愛してる、って言ったわけじゃないからね





冷静と情熱のあいだ


僕には、情熱しかいらないや








ゆうが

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