短篇

□ネクタイ
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景時こっちの世界に来て一ヵ月が経った。景時の新しい住居や就職も決まり、生活も安定し始めていた。望美は新居に遊びには来るが景時が泊めてくれることは少なかった。そんな貴重なお泊まりの翌日、望美は学校が休みなのだが景時は仕事で指定のシャツに着替えていた。

「着替えたらキッチンに来て下さいね。」

愛らしい人がキッチンで待っているとなると身なりにも気合いが入るが、どうもネクタイが好きになれなかった。それは息苦しさを感じるからだ。だから首にネクタイをかけただけでキッチンに向かうとコーヒーをお揃いのマグカップに淹れるところだった。

「お待たせ。」
「…あれ?ネクタイ結ばないんですか?」
「あー…、(…そうだ)望美ちゃんが結んでよ?」

愛しい人に結んでもらえば気分も変わると思って甘えてみる。望美はクスクス笑いながらネクタイに手を掛けると結び始めた。
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