花束

□陽気に誘われて
1ページ/5ページ

寒い冬を越え、暖かい春がやってきた。
草花たちは待ってましたとばかりに、葉を茂らせ蕾を咲かせる。
そんな春の訪れに、心なしか気持ちもそわそわ。

「すっかり春ですね」
「うん、このまま家で過ごすのも勿体ないね〜」

暖かい風を感じながら景時と怜霞は縁側に座る。

「…春を感じに一緒に出掛けようか?」

それはささやかなデートのお誘い。
差し出された景時の手を取り、そのまま縁側から門を出て行く。

「うわぁ〜、花がいっぱい!こんな場所いつ見付けたんですか?」

着いた先は、広い原っぱ。
いつの時代も変わらない、春の草花が咲き誇っている。

「いつか怜霞ちゃんと来ようと思ってた秘密の場所なんだ♪」

そう言えば、怜霞の顔は紅く染まる。
本当は朔と昔良く遊んだ場所なだけだったりするのだが、その真実は喜ぶ怜霞の為に明さない。
好きな娘を喜ばせたいホンの小さな見栄っ張り。
怜霞の可愛い反応に景時はそれだけで大満足だ。

「…景時さん、ここで少し待っていて下さい」

何かを見付けたらしい怜霞は景時にそう告げると原っぱの中央へと駆けて行く。
事情の飲み込めなかった景時だが、言われた通りにその場に座り、怜霞の行動を観察する。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ