花束

□兄の気持ち
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神子様達御一行はヒノエのお薦めである宿へとやって来た。

「長旅、お疲れ様でした」

そこの看板娘であろう人物に声を掛けられて一部の者は驚いた。

「そなたはカナ殿ではないか!?久しく見ないうちに美しくなられたな」

そう言いながらニコニコと九郎はその女性に近付く。
普段女性を褒めるような事がない彼だけに発言に驚く現代組。

「ありがとうございます。九郎様も男前をお上げになられましたね」

二人楽しそうに話をしていると

「九郎…近付き過ぎです」

ずいっと二人の仲を割るようにして入る人物が。

「元気でしたか、カナ?」

そう言いながら彼女の頭を撫でる弁慶。

「はい。兄様(あにさま)もご健在で何よりです」
「………弁慶、カナ殿の事が大切なのは分かるが、少しくらいは話をさせてくれ」
「あぁすみません。君が女性を褒めたりするものですから、つい」

そう言いながらも場は譲らないとばかりに、二人の間から動こうとはしなかった。

「あの〜」

望美が声を掛ければ三人の視線が集まる。
視線の意味に気付いた弁慶が

「すみません、紹介が遅れましたね。彼女は僕の妹です」

みんなに紹介をする。

「初めまして、カナと申します。兄様がお世話になっています」

ペコリと頭を下げれば

「こ、こちらこそお世話になっていますっ」

とカナと初対面の望美と譲と景時・朔は慌てて頭を下げたのだった。

「長旅でお疲れでしょう。今日はゆっくり過ごして下さいね」

「ありがとうございます」

部屋へご案内しますと宿に上がる時、カナは一行の後ろに九郎同様、久しい顔を見つけ心が弾む。

「リズ先生も御一緒だったのですね!」

カナは幼いの頃、兄に会いに京に行った折、凄い方が居ると兄に連れられ、何度かリズヴァーンと会っていた。

「カナ殿は相変わらず元気が良いな」
「元気だけが取り柄ですから。…あの、リズ先生?」
「ん?」
「時間の空いている時、色々な話を聞きに行っても宜しいですか?」

窺うような声にリズヴァーンはクスリと目を細めると、カナの頭に大きな手を置き

「あぁ、いつでも来なさい」

と撫でれば

「はいっ」

とカナの満面の笑みが返って来る。
そんなカナの様子に弁慶は悟った。
―――大事な妹カナはリズ先生に淡い『恋』をしていると。
ならば二人きりにしてはなるものかと策略を練る前に、確信を得るため、直球に訊く事にした。
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