二次元コーナー

□小説・紙がないっ!!
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『脱出っ』

俺、浩太は今、18年の人生で最大のピンチを迎えていた!

「……う」
「どうしたの? 顔色悪いよ」

はじめて彼女を家に招き、彼女がご飯なんか作ってくれちゃってもう幸せ絶頂だったのに。

「いや……何でもないよ。ごめん、ちょっとトイレに行ってくるね」
「うん……」

そのご飯の中に混入していた、何か変な黒い物体を頑張って食べきったのがいけなかったらしい。
彼女いわく、『自家製チャーシュー』。

でもあれは、もはや消し炭だった。

「やばい、早くしないと!」

そして俺はトイレにこもり、ピンチを抜けた。

そして今、早くも最大ピンチ更新級の非常事態が起きている。

「ふぅ、すっきりした〜」

からん。

「あれ?」

かららん。

トイレットペーパーに手を伸ばすが、返ってくるのはそんなそっけない音のみ。

紙独特のやわらかさなど、どこにもない。

コレは……ヤバイ。

「ちょ、ありえねぇ〜っ!!」

座ったまま、個室のあちこちを探し回る俺。
彼女を待たせている、あまり時間は取れない。

どうしよう、大声で叫ぶか?
『紙がないから持ってきてくれ』って。

「いかん、落ち着け俺!!」

彼女に100パー聞こえてしまう!
は、恥ずかしい……っ!!

「くそ、どうすれば……どうすれば良いんだよぉおおっ!!!」

「何か騒がしいけど、何かあったの?」
どきーん。
「え? いやいや、なんでもないよ。もうちょっと待っててくれるかな? はは……ごめんね」

彼女の足音が遠ざかり、俺は後悔した。

そうだよ、今伝えておけばよかったんだよ恥を忍んで!!

俺の焦りは限界を超え、落ち着こうと吐いたため息。

すると……

「……あれ?」

目の前には、便器に座って固まる俺、の、頭頂部。

あれ? これひょっとして、あれれ?

「……幽体離脱」

神の気まぐれ、俺は狂喜乱舞した。

「やった、これで紙を探しに行けるぜ☆」

ドアの隙間から脱出し、俺はトイレットペーパーを探しに、魂のみの旅に出た……。
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