□出逢ったその瞬間から
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相互小説 ぱんだごん 徠様・蓮見様
萌ぼく学園パロ・甘



出逢ったその瞬間から




窓側の列の3番目。そこに何時も彼はにこにこと笑いながら座っている。優等生であり且つ美少年の彼にこそ才色兼備という言葉は相応しい、とぼくは思う。でもぼくはそんな事を言える立場ではないし、本心を言う事の出来ない口下手(嘘はスラスラと言えるのだが)でもあるから彼を褒め称える事も面と向かって会話する事も出来ないのだ。この、場所では。






ぼくは教員を目指す教育実習生だ。本当は別の事がしたかったという訳でもなく、なんとなく知人に誘われ教師を目指した。因みにその知人はそれから少しして問題を起こしてしまい、現在は剣道の道場でバイトをしている。ちょっと下心のあったぼくにはそれが残念だった。戯言だけど。

生徒に適当に教科書を読ませ、その文に対し説明をしていく。
「うん、それで合ってるよ。伊耶那岐命は愛しい奥さんの伊耶那美命の為、黄泉の国へ行ってしまうんだ。その前に伊耶那美命を焼き殺した子、火之迦具土を殺してからね。因みにその遺体、血から新たな神が成ったんだけど…それは重要じゃあないから教科書読んでおいて」
「先生やる気なーい」
「何だ生意気だな?小テストに出して欲しい?」
生徒から笑いと、非難の声が上がる。嘘だよ、と言えば遮った生徒はホッとしたような顔になる。その間にチラリと彼を盗み見れ目が合いニコリと笑みで返された。その笑顔にドキリと心臓が跳ね自分の頬が赤くなってしまったが、一つ咳払いして平静を取り繕い授業の続きをする。
「ごほんっ、えーと…で、迎えに行ったんだけど伊耶那美命は既に黄泉の食べ物を口にしてしまっていたから戻れない。だから黄泉の神様に相談します、その間は私を見ないでと言って奥の部屋に入ってしまうんだ。はい、ではそこの机に涎垂らして寝ている理澄ちゃん!の隣の伊織ちゃん。伊耶那岐命はどうしましたか。現代語役で答えなさい」
「はいぃい!?私ですかぁあ!え、えとー、櫛、の一本の歯を折ってそれに火を付けて見たら蛆がいっぱいで八の雷の神が成っていた?」
「うーん、まぁ及第点。テストに其の侭書くと外れるけど」
「駄目じゃないですかぁあ!」
怒る彼女を無視して読み進める。何を言っても無駄だと判断した彼女は可愛らしい顔を膨らませながらも授業に集中するようだ。えらいえらい。
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