長編

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「山崎、」




ざわつく放課後の教室で、私を呼ぶ声が聞こえた。
その声に振り向けば、同じクラスでサッカー部の豪炎寺が片手をあげて立っていた。




「部活、一緒に行かないか?」



『もちろんっ!』




私は笑顔でうなずくと、さっさと荷物をまとめて彼と並んで歩きだす。

いつものように他愛もない話をしながら、チラリと隣にいる彼の顔を見た。


容姿端麗、頭脳明晰、おまけに1年生でサッカー部のエース。そんな彼と一緒にいることは、私にとってなんだか不思議な事だった。

女子にはもちろんモテモテ。
よく呼び出されているのを見かけるし。
(ちなみにその女子がよく泣いて帰ってくるのもよく見る。)
なんで私みたいな普通の奴とつるむんだろう…


豪炎寺の横顔をガン見しながらそんなことを考えていると、不意に彼と目が合った。



「…さっきから人の顔ばかり見て、どうかしたのか?」



『え、あ、いや!?なんでもないよ、うん。』



「…ならいいが…」




豪炎寺はそれ以上深くは訊いてこなかったけど、どこか腑に落ちない表情をしていた。


そんなこんなでサッカー部の部室に到着。
中にはすでに武方3兄弟がいて、私たちが扉を開けると、3人は一斉にこちらを見た。




「おや、2人仲良くお出ましですか。」



「いいじゃん、青春ー」



『ちょ、そんなんじゃないから…!!』




私が照れて反論すると、3人はますます顔をニヤニヤと歪める。



『もう…豪炎寺もなにか言ってよ…』



「…別に、俺と山崎の中が良いのは事実だからな。」




サラッとなに言ってんのこの人。

武方3兄弟はその台詞にヒューヒュー!と冷やかす。豪炎寺はそれを気にする様子もなく、ロッカーを開けて荷物を整理している。

なんでそんなに平然としていられるんだろう…私と同じ中1なのに妙に落ち着いてるんだよね…


というかさっきから私ばっかり照れてる。
心なしか豪炎寺の横顔も楽しそうに緩んでいるし。
…まぁ、君が楽しいなら別にいいんだけどね私は…



『もう、バカなこと言ってないで早く着替えて部活!』




私は赤い顔もそのままに、3人に向かってそう怒鳴って部室を出た。




『まったく…。私も着替えなきゃ』



そして私はひとり、女子更衣室に向かったのだった。







部活へ行こう!

(山崎のやつ顔真っ赤だったな、豪炎寺!)

(………)

(あれ、お前も顔赤…)







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