長編
□04
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いよいよ全国大会が始まった。
今日はその全国大会の初戦。
フィールドで試合前のウォーミングアップをする皆は今日も調子がよさそうだ。
私は、試合が始まる前にドリンクやらタオルやらを準備するべく、ロッカールームに戻ろうとベンチを離れた。
ロッカールームまでの道を歩いていると、途中で腕組みをしながら壁に寄りかかって立っている人物を発見した。
その人物は、もうすぐ始まる試合で私たちの敵となるチームのユニフォームを着ていた。
『…?』
もうすぐ試合が始まるというのに、こんなところで油を売っていていいのだろうか。
おっと、そんなことを考えている私もゆっくり考えている暇はない。急がないと試合に遅れてしまう。
そう思いながらその人物の前を通りかかる。
『…!?』
すると、その男は突然私の腕を掴んだ。
『あ、あの…?』
恐る恐る男の顔を見ると、彼はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていた。
「…アンタ、木戸川のマネージャーだよなぁ?」
『…そうですけど…』
私がそう言うと、その男は私の耳元でひっそりと呟いた。
「なぁ、今日の試合…負けてくれよ。」
『…!?』
男の口から出た信じられない言葉に、私は一瞬言葉を失った。
『八百長…!?』
「あぁ、そうなるな。な、頼むよ。今日彼女が見に来てんだ。負けたらかっこ悪いんだわ。」
ありえない。そんなことで相手に負けを要求するなんて。どうしてこんな奴のチームが全国まで来れたのかが不思議すぎてたまらない。
『そんなこと、私たちには関係ありません。こんな風に頼まなくても、実力で勝てばいいじゃないですか。』
私がそう言うやいなや、男は私を壁に押し付けた。そして、低く唸るように声を発す。
「…そうか。じゃあ仕方ねぇよなぁ…?」
男はそう言って私の服の中に手を忍ばせる。
『ちょっと…!なにして…!!』
私は必死に男の手から逃れようと抵抗するが、男の力に敵うはずもなくやすやすと抑え込まれてしまう。
「アンタをここで犯したら…木戸川のやつらはどうなるかなぁ…?」
『どうにもならない…!こっちには豪炎寺たちがいるんだから…!!』
私は諦めずに男の腕の中でじたばたと暴れながら男をキッと睨みつける。
「…その豪炎寺の弱点が、アンタだって聞いたんでなぁ…」
『はぁ…!?』
何言ってんのこの男。
私が豪炎寺の弱点?そんなはずない。
どうしてそうなるんだ。
『は…っくだらない…!こんなことしてまで彼女にかっこいいとこ見せたいわけ…!?そんなんじゃいつか愛想つかされるに決まってる…!』
「…っせぇ!!」
私の言葉にカッとなった男が右手を振り上げ、私の顔めがけて勢いよく降り下ろす。ぶたれた頬がじんじんと痛んだ。
ちくしょう、やられてばかりで悔しい。というかなんで私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ…!!
私は目の前の男にむかつき、痛む頬を放って大きく息を吸い込んだ。
『誰かー!!助けてー!!!』
私がそう叫ぶと、男は慌てて私の口を手でふさいだ。
「この女っ…!」
『んんっー』
両足の間に男の足が入り込んできて、今まで以上に身動きができない。
スカートの中に男の手が侵入してくる。全身の毛がよだつのを感じた。
これは、本格的にやばいかもしれない…っ
「うわっ!」
『…え…』
もうダメだと目を強く閉じた瞬間、男の声が聞こえたかと思うと、それと同時に掴まれていた両手は解放された。閉じた目をそっと開くと、そこには…
「はぁ、はぁ…大丈夫か、山崎…!」
息を切らせた豪炎寺が立っていた。彼の足もとにはサッカーボールが転がっている。目の前にいたはずの男は地面に倒れていて。
それを見て、豪炎寺がこの男にボールをぶつけたのかと理解する。
「て、めぇ…!!」
男はむくりと起き上がると、豪炎寺を睨みつける。すると豪炎寺は、もともとすごい目力をもっと強めて男をぎろりと睨んだ。
豪炎寺に睨まれた男はビビってしまい、フィールドの方へと去っていった。ふん、口程にもないやつめ。
豪炎寺は男の後ろ姿を見てふぅ、とため息をつくと、心配そうな顔で私を見る。
「…遅くなってすまない、大丈夫か?」
『うん!ありがとう、豪炎寺!』
「戻ってこないから心配した…」
『あ…ごめん…』
今から試合だというのに、いらぬ心配をかけてしまったのかと思うと、すごく申し訳ない。
私がしゅん、と俯くと頭に豪炎寺の手が優しく乗せられた。
「行くぞ。」
私が顔を上げると、彼はそれだけ言って歩き出した。
『ま、待ってよ…!』
慌てて豪炎寺の後ろを追う。私の呼びかけで振り向いた彼は、怪我がなくてよかった、と言って笑った。
My Hero!
その試合は豪炎寺のハットトリックで勝利を収めました。
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なんだかよくわからない&ベタな展開←
豪炎寺はいざという時に助けに来てくれる
ヒーローだと思ってるよ!
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