短編

□Only you
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「…すまない。好きなやつがいるんだ。」





俺がそう言うと、泣きながら走り去っていく後輩。


告白を断るというのは、何回経験しても慣れない。目の前で泣かれるのはどう対応していいか分からないし、断っても諦めてくれない場合はなかなか面倒な事になる。


走り去る小さな背中をぼんやり眺めながらため息をついた。





「…戻るか。」





もうすぐ昼休みが終わる。
俺は中庭を離れ、教室に戻った。



教室に戻って席に着くと、隣の席に座る俺の幼なじみで想い人の名前が机に肘をついて俺を見ていた。





『…どうだった?』





「…断った。」





『…そう。可愛い子だったのに。』





「…見たのか」





『…!!』





名前はしまった、と手で口を抑えて顔を赤く染める。
それが可愛くて、俺はつい笑顔になってしまう。





『な、なんで笑うのっ!』





「いや、悪い。で、見たんだろ?」






俺が改めてそう訊くと、名前はうっ、と顔を強張らせる。





『い、言っとくけど、別に修也の事が気になったとかそんなんじゃ…!』





「気になってたんだな。」





『な…!』





「口ではそう言ってても、顔に書いてあるぞ。」





名前の顔が真っ赤に染め上がる。あぁ、図星だったのか。
嘘をつけない彼女は、昔と変わらない。思えば、俺は昔からそこに惹かれていたのだろう。





『と、とにかく!!』





「!」





突然俺の顔を両手で強く、それでいて優しく包む名前。

彼女のほのかに赤い顔が近くにあり、俺の心臓は騒がしくなる。





『とにかく、修也は私だけ見てればいいの!』





彼女のその言葉に俺は、バカだな、と笑った。

バカ、という言葉に対して顔を赤くして怒る名前を無視して、彼女にそっとキスをする。







Only you

(俺には最初からお前しか見えていないというのに。)




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花奏様へ。
ツンデレヒロイン頑張りました←

リクエストありがとうございました!



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