短編
□落ち込みキャプテンのI love you.
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『マーク?』
そう言ってあたしはマークが居るはずの部屋のドアを叩いた。
しかし、耳を澄ませても声はおろか、物音すらも聞こえない。
『入るよー?』
そう言ってもやはり返事は無い。それを勝手に肯定と受け止めたあたしはドアノブを回す。
…きっと、落ち込んでいるんだろうな。今日の試合で負けてしまったことをキャプテンとして悔やんでいるのだと予想する。
……そして何より、大切なチームメイトであるカズヤの怪我に気付けなかった自分に少なからず苛立ちを感じているはずだ。
あたしはドアノブを握る右手に力を入れてドアを開こうとする。
………待てよ。
今、あたしが彼の元へ行ったところで、マークは元気を出してくれるのか?
……いや、それはナイな。
そんな考えがあたしの脳内を駆け巡った。
あたしはただのマネージャーで、選手である皆のように試合に勝つために練習や特訓を頑張ってきた訳ではない。
ただドリンクを作ったり、ユニフォームを洗濯したりと、横でサポートをしてきただけだ。
もちろん、皆のことは応援してきた。頑張れと、勝って欲しいと、願っていた。
だがしかし、前にも述べたようにただのマネージャーであるあたしと、アメリカ代表を背負っていて、しかもキャプテンである彼が、同じ気持ちを共有できるはずが無いのだ。
急に自信を無くしたあたしは、静かにドアノブから手を離そうとした。
…その時。
突然ドアが開いたのだ。
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