短編
□本当の自分
1ページ/1ページ
“言葉遣いに気を付けなさい”
“あなたは女の子なんだからもっとおしとやかに───”
『はぁ……』
どうして?何で大人の言うことばかり聞かないといけないの?
本当の自分を出すのはダメ?髪が短くて何が悪い?
『はぁ……』
本日二度目のため息。
「どうした?」
フと上から飛んできた声に顔を上げる。
すると、そこにはチームメイトの豪炎寺がいた。
『あ…豪炎寺……』
「何かあったか?」
……話してみようかな。
『実は、さ……』
あたしは自分の性格、男勝りで活発すぎるところを親に直せと言われる事を言った。
『あたしは、家庭科なんて嫌い。体育の方が好き。』
「あぁ。」
『動かないとやってられないし、運動が好き。走るのが好き。何よりサッカーが好き。』
「…あぁ。」
『あたしは他の女子と違って、男みたい。見た目も、中身も。……こんな女の子ってやっぱりおかしい?』
普通だったら皆、珍しいと思うだろう。あたしみたいな子。
「いや。」
『え?』
「…そのままで良いと思うぞ?名前は。少なくとも俺はそう思っているがな。」
…びっくりした。まさか豪炎寺がそんな事言うなんて。
『…ありがと…』
「気にするな。それに、名前には女らしいところもあると思うぞ?」
『え?』
その瞬間、あたしの唇には温もりが。
そして目の前には豪炎寺の顔。
キスされていると分かった途端、あたしの顔が赤くなるのを感じた。
唇が離れると、豪炎寺はフッと笑った。
「そういうところとか、な」
『な……っ!!』
「じゃあな。」
そう言って、豪炎寺はその場を離れて行く。
あたしはまだ動けずにいた。
『…ばか。初めてだったんだぞ…っ……ん?』
…でも、許してあげることにしようか。
その赤くなった耳に免じて、
.