短編
□不器用なわけ
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俺は、
俺達プロミネンスは、
雷門に負けた。
俺は試合終え、自室で寝転がっていた。そして今日の試合を思い出してみる。
クソッ…無性に苛々する。なんで勝てなかったんだ。なんで俺は───
ガチャッ
その時、誰かが俺の部屋に入ってきた。
『晴矢ー』
…名前だ。こいつは小さい時から一緒にいて、今も俺のチームのマネージャーをしている。
…よりによってこんな時に……
「…何しに来たんだよ…」
俺は顔も向けず、ぶっきらぼうに声を出した。
『…別に、何時もの事でしょ?あたしが晴矢の部屋に来るのは。』
「…………」
沈黙が続く。その沈黙を破ったのは名前だった。
『……試合…負けたね…』
「……っ!!」
今その事を考えていたのにこいつは……!!
名前の言葉が妙に頭に響いた。そして先ほどより更に苛つく。
ダンッ!!
『っ!!』
俺は凄い勢いで名前を壁に押し付けた。
「お前…っ犯すぞ……っ!」
自分でも驚く発言をしてしまった。
『……良いよ』
「…は…?」
思ってもみなかった名前の返事に、俺はまぬけな声を出してしまった。
『良いよ…晴矢なら。』
俺の目を真っ直ぐに見上げて言う名前。
「お前…っ…」
『でも。…これからはちゃんと言って欲しいな。悔しいとか悲しいとか。…あたしはこれでも晴矢の幼なじみだし、マネージャーだしね。』
やわらかく微笑みながら話す名前を見て、俺は自分の名前への態度の愚かさを知った。
『だから───』
俺は名前の言葉を遮り、抱き締めた。優しく、包みこむように。
「…ごめん…」
『…謝らないで…?』
「俺っ…負けて、苛ついてお前にあたっちまった。わりぃ……」
『うん』
「これからも俺の横に居てくれよな…」
『…それってどういう──』
名前が顔を上げた瞬間、俺は自分の唇を彼女の唇に押しあてた。
『ん…っ』
唇を離すと、真っ赤な顔をした名前と目が合った。
「…ずっと…好きだったんだ……」
『あ…あたしも……好き……』
不器用なのは、
キミだから。
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