短編
□初恋
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あたしの初恋は、部の監督だった。
最初は大嫌いだった。
冷たくて何考えてるか分かんないし。愛想悪いし。
でも、ある日の練習中──
『ハア…ッ(ダルい…暑い…頭痛い──)』
熱があった。前の日から風邪っぽかったし。
でも、誰も気付いていない。あたしはいつもと同じようにプレイしていたし、至って元気に走り回っていたし。
…でも、そろそろ限界かも。頭の中がぐるぐるして今にも倒れそう。
──その時だった。
「名前。」
『…はい?(ゲッ…この人苦手なのに…)どうしたんですか?監督。』
ヒヤッ
監督の少しひんやりしていて大きい手があたしの額に触れた。
『…!!?か、監督!!?』
「…やはりな……熱がある。」
そう言って、あたしの目線に合わせて少し屈む。
『あ、あの………』
「…無理はするな。医務室に行くぞ。」
突然監督が視界から消えたかと思うと、あたしの体が浮いた。つまり、あたしは監督に姫抱きされている。
『おおお、降ろして下さい!!』
「断る。」
『な…っ自分で歩けます!!』
なんだ!この公開処刑は!!!恥ずかしすぎるでしょ!!
あたしの抵抗もむなしく、結局監督に抱かれたまま運ばれてしまった。
**************
──in医務室───
割と優しくベッドに降ろされる。
『ハア……』
「…騒ぐから熱が上がったんじゃないのか」
『…うるさいです…ケホ…』
「薬を飲め。」
『い、嫌ですっ!!』
監督は錠剤の薬と水を持ってこっちに近づいてくる。
「…薬が嫌……子供か…」
『むっ……な、何と言われようが嫌です!!』
かたくなになって薬を拒むあたしに、監督は一つため息を吐いた。
「……仕方がないな…」
監督は自分で薬と水を口の中に含んだ。
『(は?何してんのこの人…まさかバカ?バカなのね?)』
そして顔をズイッと近付けてくる。
『(え?もしかして…いや、もしかしなくても……この展開は──っ)』
そう思った瞬間、後頭部を抑えられ、体がこわばるのが分かった。
そして止まることなく監督は顔を近付けてくる。
『ん……っ!!?』
唇がくっついたかと思うと、口の中に水と薬のような個体のものが入ってくる。
『……っ』
仕方なくゴクンと飲み込むと監督は唇を離した。
『…ハァ…』
「…おとなしく寝ていろよ。」
そう言って監督は出て行った。
少し顔が赤かった…??いや、んなことよりも。
あたしは唇に手を当てて考える。
『(どうしてあんな事…監督なのに……でも、嫌じゃなかった……)』
さっきの事を考えるとドキドキして体が熱く感じる。
熱のせいかもしれない。
でも……この気持ちはきっと、
恋
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