GO!
□待ってるから
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ウィン、
フィフスセクターのアジトの自動ドアが開いた。
やっと、会える。
白髪に水色のメッシュの入った髪
赤色のスーツに強く輝くピアス。
…柄にもない格好しちゃって。
「聖帝にお会いしたいと言う方を連れて参りました。」
側近らしき男がそう言うと、伏せていた顔をゆっくりと上げる聖帝と呼ばれた男。
その男は、私の姿を見ると静かに目を見開いたのが分かった。
私はゆっくりその男に近づく。
『久しぶりね、修也。』
そう、フィフスセクターの聖帝は
中学の頃に知り合った雷門のエースストライカー、豪炎寺修也。
「…その名で呼ぶな。」
ゆっくりと、鋭さを持った言葉が彼の口から放たれた。
『どうしてこんなことをしているの、修也。』
懲りずに彼の本当の名を呼び続ける私に、密かに眉を寄せた修也は、側近に席を外すように言った。
数名いた側近が部屋を出ていき、この空間には修也と私の2人きりとなった。
「…お前には関係ない。」
『…昔は楽しく自由にサッカーしてたじゃない。思うようにサッカーができない苦しみを、修也は2回も味わったでしょう?その辛さを一番分かっているのはあなたよ。』
「サッカーは、変わったんだ…」
そう言って目を細める修也。
いつからこんなになってしまったのか。
サッカーの世界も、私達も。
昔と今が違いすぎて、分からない。
…分かりたくもない。
『…今からでも遅くはない。また一緒に、昔のサッカーを取り戻そうよ、修也…』
「…聞けぬ案だな。」
何があったか、教えてよ。
サッカー日本代表から突然姿を消したと同時に連絡がつかなくなった修也。
今日、やっとの思いで会えたというのに。
どうしてろくに目も合わせてくれないの?
私はずっとこの日を待ちわびていたというのに。
『お願い、修也…私はまだあなたを…』
私がまだ言い終わらないうちに感じた懐かしい温もり。
彼の体温を感じたのはいつぶりだろう。
私の目からは涙が流れた。
ゆっくりと近付いてくる顔に、目を閉じると一瞬だけ重なり、離れた唇。
『しゅう…』
私が言葉を紡ごうとすると、再び重ねられるそれ。
頭と腰に手をまわされ、さっきよりも深く口づけられる。
「…名前っ…」
彼が私の名を呼んだとき、一瞬だけ修也は昔の修也に戻った気がした。
「その先は…言うな…」
唇を離した修也は、私の目をまっすぐ見て切なげにそう言った。
『修也っ…!』
修也は一方的に私から手を離し、奥へ向かって歩きだした。
『待って…修也!!』
私が叫んでも、振り向いてさえくれない修也。
待って、待ってよ。
私は何度あなたに置いて行かれるの?
『待ってるから!!』
修也の姿は奥へ消え、私の声は彼に届いたのかも分からないまま悲しげに響いた。
待ってるから
(…すまない、名前…っ)
俺は静かに涙を流した。
(愛してる…)
彼女に届くはずもない言葉は、辺りに虚しく響いた。
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