GO!

□待ってるから
1ページ/1ページ



ウィン、

フィフスセクターのアジトの自動ドアが開いた。

やっと、会える。


白髪に水色のメッシュの入った髪
赤色のスーツに強く輝くピアス。
…柄にもない格好しちゃって。



「聖帝にお会いしたいと言う方を連れて参りました。」



側近らしき男がそう言うと、伏せていた顔をゆっくりと上げる聖帝と呼ばれた男。
その男は、私の姿を見ると静かに目を見開いたのが分かった。

私はゆっくりその男に近づく。


『久しぶりね、修也。』



そう、フィフスセクターの聖帝は
中学の頃に知り合った雷門のエースストライカー、豪炎寺修也。



「…その名で呼ぶな。」



ゆっくりと、鋭さを持った言葉が彼の口から放たれた。



『どうしてこんなことをしているの、修也。』



懲りずに彼の本当の名を呼び続ける私に、密かに眉を寄せた修也は、側近に席を外すように言った。

数名いた側近が部屋を出ていき、この空間には修也と私の2人きりとなった。



「…お前には関係ない。」
『…昔は楽しく自由にサッカーしてたじゃない。思うようにサッカーができない苦しみを、修也は2回も味わったでしょう?その辛さを一番分かっているのはあなたよ。』
「サッカーは、変わったんだ…」



そう言って目を細める修也。
いつからこんなになってしまったのか。

サッカーの世界も、私達も。
昔と今が違いすぎて、分からない。
…分かりたくもない。



『…今からでも遅くはない。また一緒に、昔のサッカーを取り戻そうよ、修也…』
「…聞けぬ案だな。」



何があったか、教えてよ。

サッカー日本代表から突然姿を消したと同時に連絡がつかなくなった修也。
今日、やっとの思いで会えたというのに。
どうしてろくに目も合わせてくれないの?
私はずっとこの日を待ちわびていたというのに。



『お願い、修也…私はまだあなたを…』



私がまだ言い終わらないうちに感じた懐かしい温もり。

彼の体温を感じたのはいつぶりだろう。
私の目からは涙が流れた。

ゆっくりと近付いてくる顔に、目を閉じると一瞬だけ重なり、離れた唇。



『しゅう…』



私が言葉を紡ごうとすると、再び重ねられるそれ。

頭と腰に手をまわされ、さっきよりも深く口づけられる。



「…名前っ…」



彼が私の名を呼んだとき、一瞬だけ修也は昔の修也に戻った気がした。



「その先は…言うな…」



唇を離した修也は、私の目をまっすぐ見て切なげにそう言った。



『修也っ…!』



修也は一方的に私から手を離し、奥へ向かって歩きだした。



『待って…修也!!』



私が叫んでも、振り向いてさえくれない修也。
待って、待ってよ。
私は何度あなたに置いて行かれるの?



『待ってるから!!』



修也の姿は奥へ消え、私の声は彼に届いたのかも分からないまま悲しげに響いた。




待ってるから

(…すまない、名前…っ)


俺は静かに涙を流した。


(愛してる…)

彼女に届くはずもない言葉は、辺りに虚しく響いた。


.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ