GO!

□泣き顔にkiss
1ページ/1ページ




天馬くんから拓人が退部届を提出したと聞き、私は部活なんてそっちのけで必死に彼を捜した。
このことを知らせてくれた天馬くんは今にも泣きそうな顔をしていて、さすがにマズイ、と感じた私は今全力で学校中を走り回っている。



『はぁ、はぁ…っ』



拓人が行きそうな場所はくまなく捜したが、見つからない。
これだけ走り回っているというのに…



『どこにいるの…』



そう呟いたと同時に、サッカー部がいつも練習しているグラウンドが目に入る。
私はそれを見てハッと思いついた場所に足を走らせた。

バンッ

音をたててサッカー棟の扉を開ける。



『拓人っ!』



サロンには、予想通り拓人がいた。
扉に背中を向けていて表情は分からないけど、肩が震えている。



『拓人…?』



私はゆっくりと拓人に歩み寄る。
すると、気配を感じたのか拓人は私に背を向けたまま話し始めた。



「俺はっ…キャプテンとして…っみんなを、守れなかった…!」
『……』
「本気になれないサッカーなんて…俺には…っ!」
『…拓人は本気だよ…』



私は、泣きながら話す拓人を後ろから抱きしめた。



『拓人は本気だから、今泣いてるんでしょ?…本当は、サッカーやめたくないんだよね?』
「…でも…俺は…っ」



拓人はそれきり黙ってしまい、私の腕にそっと手を添えて嗚咽を押し殺すように泣いていた。



『辛かったね、拓人…』



私がそう言うと、拓人は体を私の方に向け、思いきり抱き着いてきた。私も彼の背中に手をまわし、抱きしめる。
拓人のふわふわの髪の毛が少しくすぐったい。



『また、がんばろう…?』



拓人は私の肩に顔を埋めたまま、小さく頷いた。
よしよし、と拓人の頭をなでる。
すると彼は顔を上げた。まだ少し涙の溜まる瞳と目が合う。



「…ごめん、泣いたりして…」
『…拓人の泣き顔は可愛いから好き。』



私はそう言って、彼にひとつキスをしたのだった。




泣き顔にキス

(…男に可愛いとか…)
(拓人はちゃんとかっこいいよ?)
(!!)


.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ