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□君と過ごす時間
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今日は、久しぶりに愛しの彼氏とデートの日です。
デートと言っても、最近駅前に新しくできたケーキバイキングに行きたいという私のわがままに無理やり付き合ってもらうだけなんだけどね。

彼と待ち合わせしている駅に着き、きょろきょろと彼の姿を捜す。



『(約束の時間過ぎてるし、もう来てるはずだよね…)』



人が多くてなかなか見つからない。
(昔はモヒカンだったからすぐに見つけられたんだけどなぁ…)
そんな下らない事を考えていると、ぽん、と頭に小さな重みを感じた。



「おせーよ。」



聞きなれたその声に振り向くと、そこには私が捜していた姿があった。



『ごめんね、服決めるのに時間かかっちゃって…。』
「そんなもん、何でもいいだろ。」
『少しでも可愛く見られたいじゃない。』
「お前は何着ても可愛いんだよ。」
『うわ、キザ!』



私が照れ隠しも兼ねてそう言うと、少しだけ顔を赤くした明王は行くぞ、と私の頭に乗せていた手をおろして、私の手を握って歩き出した。



『(昔は可愛い、なんて絶対言ってくれなかったのにな)』



さっきの明王の台詞を思い出し、頬が緩むのを必死に抑えていると、あっという間にケーキ屋さんに到着。
私はさっそくケーキを食べ始めた。



『お…おいしい…!』



私はあまりのおいしさに顔が綻ぶのを感じながら、いろんな種類のケーキを次々と平らげていく。

そんな私の様子を正面で見ていた明王は、ケーキとは正反対のブラックコーヒーを飲みながら呆れた顔をしている。



「…よくそんな甘いもんばっか食えるな。」



彼は甘いものが苦手で、全くと言っていいほどケーキなんてものは口にしない。
だからこんなところに来ても、食べることはしないのだ。今日は私があまりにもしつこく誘うから仕方なく来てくれているんだけど…



『私からすれば、甘いもの食べないなんてあり得ないよ。そんなんで生きてて楽しいの?』
「余計なお世話だバーカ。」



私は明王の文句を華麗にスルーし、順調にケーキを食べ進めていく。



「…なぁ、名前。」
『ん?』



不意に名前を呼ばれ、ケーキから明王へと視線を移せば、いつになく真剣な表情で私を見ている彼と目が合う。



『どうかしたの?』



私はいったんケーキを食べるのを中止して、名残惜しく思いながらもフォークを置いた。
すると、彼はポケットから何やら小さな箱を取り出し、ふたを開けてテーブルの上に置いた。
その中にあったのは、キラキラ光る指輪…



「…そろそろ、本当に俺のもんになれよ。」
『…え?』
「だから、…不動名前になれって言ってんだよ。」
『…それって…プロポーズ…?』
「…言わねーと分からねーのか。」
『…もっと、ちゃんと聞きたい。』



私がわざとそう言えば、明王は目を真ん丸にして驚いた。
そして、一度だけ大きく息を吸うと、まっすぐに私の目を見て口を開く。



「…俺と、結婚しろ。」



命令口調の言い方には若干ひっかかったけど、それも彼らしくて、嬉しくて…
私は泣きそうになりながら、頷いた。





君と過ごす時間

それは、ケーキよりも甘くて。

(この指輪、いくらしたの?)
(…普通そういうこと訊くか?)



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