GO!

□幼馴染なんて
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ある日。
いつものハードな部活を終えて帰宅し、風呂に入ってようやくのんびりできる時間。

俺はいつものように、風呂あがりで濡れた髪の毛もろくに乾かさず自分の部屋で漫画を読んでいた。

しばらく漫画を読み漁っていると、静かな部屋にコンコン、と軽快な音が響く。
窓の方に向かいカーテンを開けると、幼馴染のあいつがへらへらと笑いながら手を振っていた。

俺とこの幼馴染、名前は家が隣同士で小さいころからずっと一緒に過ごしてきた。
もちろん俺は彼女を幼馴染として見てはいない。
物心ついた時から彼女に想いを寄せているのだ。

俺が窓を開けてやると、いつものように俺の部屋に入り、ベットを占領する。



「…お前、よく俺の部屋なんかに来るな…何が面白いんだ?」



俺がそう言うと、彼女はきょとん、とした表情を浮かべた。



『そんな質問、今さらだねぇ…家にいても暇なんだもん。』
「…だいたい、男の部屋に来るのがどんな事かくらいお前だって知って…」



俺の言葉は、名前が俺の肩にかけていたタオルを取ったことによって遮られる。



『また髪乾かさないで…風邪ひくってば。』



名前はそう言うと、俺の背後に移動してタオルで俺の髪をわしゃわしゃと拭き始めた。



「ちょ、名前っ!?このくらい自分で…」
『蘭丸はいつも適当だからだめー!』



俺は抵抗するのを諦めてじっとおとなしくする事に決め込んだ。
相変わらず彼女は一生懸命俺の頭をタオルで乾かしている。



『…蘭丸さ、せっかく綺麗な髪なんだからもっと気を遣わないと傷んじゃうよ?』
「…あぁ…」



俺がそう言うと、訪れた静寂。
お互い何も言葉を発さず、俺はただおとなしく髪を拭かれていた。



『よし、もう大丈夫かな?』



そう言って彼女は俺の頭から手を離そうとする。俺は離れようとする彼女の手首を咄嗟につかんだ。



『…蘭丸…?』



俺の行動に驚いたであろう彼女は、不思議そうな顔をしているんだろう。
俺はそんなことを考えながらゆっくり後ろを振り返って彼女を見ると、予想通りの顔をしていた。



「…ごめん、」
『え…?』



突然謝る俺に、彼女は困惑している様子だ。
そんな彼女とは裏腹に、俺は落ち着いているような振る舞いだが心臓はバクバクだ。



「…好きなんだよ、お前の事が。」



俺がそう言えば、顔を真っ赤にして固まる名前。本当は逃げたくてしょうがないのだろうけど、俺が彼女の手首を掴んでいるのでそれは叶わない。



『あ…っわ、私…』



相変わらず真っ赤な顔で何かを伝えようとしている彼女。それが可愛くて、本人には悪いが口元が緩みそうになる。



『私も好き…!』



その言葉を聞き、俺は彼女を思いきり抱きしめた。



『ら、蘭丸…!』



名前は困惑しつつも、おずおずと俺の背中に手をまわす。



「好きだ、名前。」
『ふふ…、私も。』




幼馴染なんて

やめてしまおうか。



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展開早すぎなんてこった。



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