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□乱されて、満たされて
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「名前、」
『はい?』



ふかふかの椅子に座る聖帝に名前を呼ばれる。彼を見れば、楽しそうに口角を上げ、私に手招きしていた。見る限り、今日は機嫌がいいらしい。どうしたんだと彼のそばに寄ると、ぐっと手を掴まれる。



『どうしたんですか。』
「いいから。」



何がいいのか分からない。そう思ったと同時に私の腰は強い力で引き寄せられ、私は彼の膝に跨がるという何とも恥ずかしい体制になってしまった。



『ちょっ、聖帝…!離してください恥ずかしい!』
「…断る。」



私の顔を見ないままそう言った彼は、私の鎖骨あたりに顔を埋めた。肌に触れる彼の吐息がくすぐったくて、思わず身をよじる。



「こら、動くな。」



そう言ってさらに強く私を抱き寄せる聖帝。あぁ、この体制はいろいろとつらい。変なところに力が入って、今にもつりそうだ。足とか。



『あの…何を…』



そう言いながら私は抵抗するのを諦め、彼に体を預ける。というか、本当にどうしてしまったんだこの人は。普段はこんな事しないのに…なんてぼんやり考えていると、聖帝の顔が埋められている鎖骨のあたりにチクリとした甘い痛みが走った。その痛みでハッと我にかえり、目線を下げる。そこには、たった今付けられたであろう赤い痣のようなものが…。



『ちょ、聖帝…!』
「シュウジだ。」
『…シュウジ、さん…』
「…何だ。」
『は、恥ずかしい、ので…!』



私がやんわり拒むと、彼は私の体から少しだけ顔を離し、私をじっと見つめた。



「お前は、私の言うことを聞いていればいい。」



鋭い目が私を射抜くように見ていて、上がった口角とか開いたシャツの間から見える胸元とかキラキラ光るピアスとか、とにかく彼の何もかもが私の胸を掻き乱していく。



『え、あ…はい…』



混乱する頭でようやくそう返事をすると、ふっ、とやわらかく笑う聖…シュウジさん。あぁもうカッコいい。無駄に!ダメだ、頭が沸いてきた。
シュウジさんはそんな私の唇にちゅっと軽い口付けをすると、私を膝から下ろし、すたすたとどこかに歩いて行ってしまう。



『え…。え?』



なに、今の。キスされたよね?あまりにも自然で分からなかったけども!
そう理解した直後に顔に集まってくる熱。



『うわぁぁぁ…』



私はへなへなとその場に座り込んだ。
誰に見られている訳でもないのに、両手で顔を覆う。
さっきのシュウジさんの笑顔が頭から離れない。あの人はどこまで私の心を奪えば気がすむの…!
あの人の傍にいると、心臓がいくつあっても足りません。





乱されて、満たされて。

(可愛いやつ。)




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