GO!

□始まりの予感
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カーテンを開けると、視界いっぱいに青空が広がっている。うん、今日はいい天気。
そんな日に、私は1人で買い物に出掛けようと試みた。
別に誰と会う訳でもないのに、無性にワクワクして無駄におしゃれをしている自分に気付く。でも、たまにはこんなのも悪くない。お気に入りの赤いピアスと緑色のピアスを右の耳に付けて髪を耳にかければ、キラリと光るそれ。
鏡で確認すると全身いい感じにまとまっていて、私のテンションは上がる。

準備をして外に出れば、いつもより空が澄んで見えた。空気もおいしい。
本当に今日はいい日になりそうだなぁ、と鼻唄を歌いながら歩き出した。

いろんなお店を見ながら街を歩く。あ、あのお店に飾ってあるワンピース可愛いかも。ちょっと寄っていこうかな。

そう思い、方向転換をしたときだった。

とんっ

誰かと軽く肩がぶつかってしまった。
しまった、ワンピースに気をとられて周りを見ていなかった。 もし恐い人だったらどうしよう。



『あ、すみませ…』



思わずぶつかった相手に見とれてしまった。だって、すごく綺麗な顔。髪はメッシュが入っているし、全体的に派手な雰囲気で、どこか近寄りがたいオーラを放っている彼。でも、私は引き寄せられるように彼に見入っていた。



「…何か…?」



私があまりにも見つめるものだから、目の前の彼は不思議そうに私の顔を覗き込んだ。うわぁ、近くで見るとますます綺麗…!



『あ、ご、ごめんなさい!怪我とかないですか?』



慌ててそう答えた私に、ふっと微笑んで頷く彼。それにまた見とれてしまう私。すると、不意に彼の手が私に向かって伸びてきた。彼と私の距離が一気に縮まる。



『え…』



彼の手はそのまま私の右耳にたどり着き、ピアスを指でなぞられる感覚を覚えた。



『あ、あの…』
「あぁ、すまない。お揃いだったからつい、な。」



お揃い…?と彼を見ると、そこには私と同じ赤と緑のピアスが光っているのが分かった。私は右耳で、彼は左耳だけど。
それを見て、私は思わずあ、と呟いた。すると、彼は"運命みたいだな"とやさしく笑った。

間近で見るその綺麗な笑顔に、私の心臓は激しく音をたてた。

どうしよう、顔の距離を意識してしまい、うまく言葉を発すことができない。口を開けば、あ、とかう…とか変な声で。彼はそんなひとりテンパっている私に声をかけた。



「これから、時間あるか?」
『え…っ』
「よかったら、何か奢る。」



そう言って、彼は近くの喫茶店を指差した。私は嬉しくなって、勢いよく頷いた。

もしかすると、今日の朝から感じていたワクワクはこれかもしれない。インドア派の私が急に出掛けようと思ったのも、無駄におしゃれをしたのも、もしかしたら彼と出会うため…?もしそうだったら、彼が言ったように運命なのかもしれない。そう思うと、私の頬は自然に緩んでいた。





始まりの予感

(どうかしたか?)
(いえっ、なんでも!)



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