短編

□Accelerating desire.
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おい、おい…苗字、
遠くで私を呼ぶ声が聞こえた。まだ完全に起きていない脳でまだ、あと少し。と考える。それでもその声は止まらなくて、それは段々近付いてくる。その声が誰のものかがやっと分かって、私はゆっくり頭を持ち上げた。



『…か、さまつ?』
「そうだよ。つーかもう授業終わってんぞ。いい加減起きろ。」
『え、うそ、まじか』
「まじだよ。このねぼすけ。」



コツン、と私の額を叩く笠松は緩く笑っていて、なんで他の女子とはろくに喋れないくせに私とは平気で…なんて考えた。私はバスケ部のマネージャーで笠松とは長い付き合いだし慣れたのか、最初から女として見られていないのか、彼にとって私は黄瀬と同じような感じなのか。
…別に、いいけど。

そうやって悶々としていると、不意に笠松の手が伸びてきた。そしてその手は指に私の髪を巻きつけながら左側の頬に添えられる。
びっくりして目を見開いてしまった。



「ここ、跡ついてんぞ。」



そう言ったときの笠松の顔が、優しくて柔らかくてあったかくて、ああもうなんでそんな顔するの。もっと好きになっちゃうじゃん。
赤くなった顔を隠すように、私はまた机に伏せた。





加速する想い

(あ、てめ、寝んな!)
(やだあー)


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