短編

□ジジさまへ!
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私の彼はいつもバスケに夢中で、いつもボールを追いかけているような自他共に認めるバスケバカ。バスケをしている時以外は大体本を読んでいるかうとうとしているか…そんな感じ。あれ、私は?彼の時間の中で私と過ごす時間はどれだけなのか。それは恐らくかなり少ない。私< < < 本< < < < < < < バスケって感じだろうか。いや、バスケと本の間には彼と同じバスケ部員たちがいるかもしれない。きっとテツの1日の中で、私といる時間よりも火神くんやバスケ部員と過ごす時間が圧倒的に多いだろう。

こうして考えてみると、私って彼の何なんだろうか。おかしいなぁ、そう思うと同時に胸が締め付けられるような感覚に襲われた。

今も私の目の前で本を読んでいるテツ。彼女と図書室でふたりきりという滅多にない貴重な時間くらい仕舞っておいて欲しいんだけどな、と彼には気付かれないように自嘲気味に笑った。私はなんで、なんのためにこんなに苦しい思いをしているんだか。



『…テツはさ』
「はい」



返事がすぐに返ってきたあたり、そこまで読書に没頭しているわけではないらしい。目線は本に向いたままだけど。



『バスケと読書と私、どれが大事なの?』



テツが驚いた顔をして本から顔を上げた。それを見て気が付いた。失言してしまった、と。こんなことを言うつもりではなかったのに。今ので間違いなく面倒な女だと思われただろう。こんな発言をしてしまうほど余裕がなかったなんて、自分でも気づかなかった。
頭では割と冷静にこんな事を考えているのに、心臓は騒がしくなり手には嫌な汗が滲む。
テツは本を閉じると、椅子から立ち上がった。
このまま帰ってしまうのだろうか、と半ば諦めたように彼を見ていると、彼は座ったままでいる私の隣にきて背中を少し丸めると、そのまま私の体を抱きしめた。

その温かさになんだか安心して、じわりと涙が浮かぶ。
私も彼の腰に腕をまわし、意外に筋肉のついた胸元に顔を押し付けた。


「…すみません。僕は欲張りなのでどれかひとつなんて選べません。どれも同じくらい好きで、大切です。」
『…うん』
「僕は名前との時間を疎かにするつもりはなかったのですが…結果的に、悲しませてしまいました。多少構わずとも、何も言わないあなたに甘えていたんです。今日も、何を話せばいいのか分からなくなって結局読書に逃げてしまいました。…すみません。」
『私も、ごめん…あんなこと…』
「いえ、今回は僕が悪いんです。」



テツはそこまで言うと少し体を離し、私の頬に手を滑らせた。



「僕はできるだけあなたの希望を叶えたいし、本当はもっと甘やかしたいんです。だから、たまにはわがままくらい言ってください。」



優しく笑いかけるテツ。じゃあ、と私は控えめに口を開いた。



『キス、してほしい…です』



私の頬に添えられていた手は顎に移動し、少し持ち上げられると重なった唇。それは温かくて優しくて、甘かった。





何を求めたのだろう

私の求めるものは最初からここにあったのにね



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ジジ様へ捧げます!
キャラは今までに書いたことがなくて
書きたいと思っていた黒子っちになりました。

満足していただける作品になっているかは疑問ですが、
受け取ってもらえたら幸いです(^^)

リクありがとうございました!


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