短編

□スターダスト
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『寒い。しぬ。』



オレの彼女は寒さにめっぽう弱い。今も背中を丸めて縮こまりふるふると震えている。そんな姿が可愛いとか思ったのは言わない。恥ずかしくてしぬ。オレが。

というかマフラー、手袋、ニット帽って、防寒ばっちりなのにまだ寒いのかこいつ。どうせカイロもあるんだろ。それだけあったらだいぶ寒さもしのげるだろうに。むしろオレの方が寒いんじゃないのか。マフラーはしているものの、他は特に防寒していない。オレはどちらかというと寒さには強いのだろうか。



『もうダメだ…家までたどり着ける気がしないよ…』
「大袈裟すぎんだろ。つーかそんだけもこもこしてんのになんでオレより寒がってんだよ。」
『ほら、私夏生まれだから寒さには弱くてね!』
「オレも夏生まれだわバァカ。」



そう言って頬をつねると、いひゃいーと返ってきたので離してやる。名前はつねられた頬をさすりながら、まだ体を震わせていた。オレは仕方ねぇな、とエナメル製の鞄からジャージを取り出す。



「ほら、これ着てろよ。」
『ん?』
「…と見せかけてーの!」



彼女の肩にそれをかけるふりをして、思いきり抱き締めてやった。
勢いをつけすぎたのか、少しよろめく名前。もー、と言いながらも嬉しそうに笑っているのをオレは見逃さない。



『大輝あったかいー』



すりすりとオレの胸にくっついてくるこいつは、猫のようだ。
そんな彼女を見ながら改めて好きだと思う。ゆるくてどこか掴み所のない、不思議な女。なんでこいつを好きになったのかは自分でもよく分からない。どこが好きなのかと聞かれたら、たぶん全部なのだろう。



「名前、」
『ん?』



彼女がオレを見上げた瞬間、その額にキスを落とした。一瞬ぽかん、としてから一気に赤く染まる顔。照れた顔を隠すように頭をオレの胸にぐりぐりと押し付けてくる。ああくそ、可愛い。



『ばかー、あついー』
「は、そりゃよかったな。」



そう言って笑えば、彼女もつられたようにして笑う。こんな些細な幸せがずっと続けばいいのに、と柄にもなく願ったりしてしまった。





スターダスト
お前となら、願わずとも叶いそうな気がするけどな。


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