短編

□今はまだ
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ザアザアと降りしきる雨を前にほっと安堵の息をついた。よかった、折り畳み持ってて。それにしても天気予報が外れることもあるんだなぁ、なんて呑気に考えていると不意に隣から困ったような声が聞こえた。



「あー…ついてねぇ。」



私よりずっと高い位置にある短髪をがしがしとかく彼は、同じクラスの若松くんだった。彼とはよく話したりふざけ合うくらいには仲良しのつもりだし、いろいろと助けてもらったりもしているのでここで見捨てるような事はできず、気付いたら私は若松くんに声をかけていた。



『若松くん?』
「あ?お、苗字。」
『よかったら入ってく?』
「…いいのか?」



意外な反応だった。てっきり断られると思っていたから、まさかそんなにあっさりと返事をしてくれるとは。



『方向一緒だったよね?』
「あー、おう。」
『それじゃあ決まり。帰ろ?』



歩き出そうとすると、私の手にあった傘はひょいと奪われる。それに驚いて若松くんを見ると、これくらいさせろ、と笑う。申し訳ないけど、身長的にも若松くんに持ってもらった方がいいのかも。私が持っていたら背の高い彼の頭に傘が当たってしまう。ここは素直に若松くんの厚意に甘えさせていただくことにした。

いつものように他愛ない会話をしながら帰路を歩く。傘の中だからか、いつも話している時とは若松くんの声が違って聞こえた。耳に優しく響くテノールが、心地よい。

それはそうと、寄り添いながら1つの小さい傘を共有するなんてまるでカップルみたいだ…と考えてしまい変な気分になりながら隣を歩く若松くんを盗み見た。

こうして並ぶと、やっぱり背が高い。さすが、バスケ部でCを務めているだけはあると納得してしまうと同時に彼が男だと思い知らされたような気がした。
分かっていたことではあるのだけど、今までは気にならなかったような細かいところにやけに目がいく。傘を持つ骨ばった大きな手だとか、程よく太い首だとかをいつもより近くで感じてしまい、正直戸惑ってしまう。
って、何を考えているんだ私は!軽く頭を左右に振っておかしな思考を吹き飛ばす。そして何か話題を、と若松くんの方に視線を向けたところで見つけたのは、ずぶ濡れの肩。

まさかと思って少し上を見ると、予想通り傘は私の方に傾けられていた。これはもしかしなくても、彼が私を濡らさないようにと配慮してくれたんだ。なんだか女の子扱いされているみたい(実際女の子なんだけど)で、顔が赤くなるのを感じた。ふざけんな、こんなとこでそういうさりげない優しさ見せるとかズルい…!
今までその気遣いに気付けなかったことがなんだか悔しくて、若松くんをジッと睨むように見た。



「ん?」



私の視線に気付いた若松くんは微妙に微笑みながら首を傾げる。そのなんてことない仕草さえズルく思えて、心臓がギュッとなる感じがした。
私、おかしい。



『…なんでもない!』
「は?なんで怒ってんだお前!」
『怒ってないバカ!』
「バ…!?それは否定しねぇけど…」



少し拗ねたような表情をする若松くんに気付かれないように、小さく笑ってこっそり彼との距離を縮めた。散々妙な気分にさせられたのだから、このくらいはいいでしょう?






今はまだ
この妙な気持ちの正体には、気付かないふりをする。




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どっかの誰かさんが若松若松言うので
書いてしまいましたどっせーい。
いつも仲良くしてもらってるし
なんやかんやで大好き(渾身のデレ)なので
愛をこめて捧げます。
その愛が文章力に伴ってなくて申し訳ない;
こんな作品でも好きって言ってくれる
さおりんまじ心のオアシス。

これからも仲良くしてくれたら嬉しい^^

リクエストというよりは
わたしが自主的に(?)書いたので
捧げものだという表記はしてませんが
一応さおりんへ!ということで!

(4/14 追記)


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