短編

□ラブピース
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私、どうして泣いてるんだっけ。
長いこと涙を長し続けた結果目は赤く腫れ、あろうことか泣いてる理由を忘れてしまったらしい。それだけ脳が忘れたがっているのかもしれない。ただ悲しくて悔しくて、そればかりが胸の中を占めているのは確かだ。



「…苗字、」



名前を呼ばれると同時に目を擦る手を掴まれた。やんわりとその手を顔から遠ざけられると、目元に感じたのはひやり、とした感覚。ハンカチを濡らしてきてくれたらしい福井は切なそうな顔をしていた。どうして福井がそんな顔をするの。



「…だから、やめとけって言ったんだ、あんな男。」
『…うん』



ああそうだ、私彼氏に浮気されて、それで泣いてるんだ。向こうから告白されてなんとなく付き合ってはみたものの彼の評判は決して良いものではなく、むしろ悪いものだった。女遊びが激しく二股なんて当たり前。そんな最低な男だと分かっていたのに付き合った自分がバカみたい。悔しいなぁ。

浮気現場を目撃した時は、なんとも思わなかった。やっぱりな、ぐらいの気持ちで、すぐに彼を責めることもせず、その場を通りすぎて放課後の教室に向かった。
そしてしばらくぼんやりと席に座っていると福井がやって来たのだ。その顔を見た瞬間、私の中の何かが溢れだしてきた。それは涙となって私の頬を流れ落ち、止まらなくなって今に至る。
情けない、あんな男のことで泣いてしかもそれを福井に見られてしまうとは。

ムカつく、ムカつく。なんで涙が止まらないの、なんで福井が私の頭を撫でているの、なんで私はその手で安心しているの。
正直、あの男のことはもうどうだっていい。浮気されたのはさすがにショックだったけど、別にそこまで本気で好きだったわけじゃない。それならどうして私はまだ泣いているのか。その原因はきっと、目の前にいる男。
私は突然現れた福井の姿に安心して子供のように泣きじゃくり、たまたまここに来ただけであろう彼に慰められている。福井に迷惑かけるな、泣き止め、と思っても彼の優しい掌が私の涙を促す。



「オレにしときゃいいのに」



その言葉にまた涙が溢れる。胸の中がじんわりと温かくなるのを感じた。おかしい、こんなんじゃまるで私が福井を好きみたいだ。
福井は指で私の目元を優しく拭う。それが温かくて離れてほしくなくて、思わずその手を握った。



『ふくい、』
「苗字…」



優しくて穏やかな声で呼ばれ、心臓がぎゅっと締め付けられるような感覚に陥る。いつだって優しく接してくれる福井のそれには慣れているはずなのに、今はとても狡いものに思えた。でもそれは嫌なものではなくて、なんとなく心地よいとさえ感じるものだった。



「今言うのも変だけどよ、オレお前のことずっと…」



そこまで言って福井は黙ってしまった。視線をさ迷わせ、何かを迷っている感じ。そこまで言ったなら全部言えばいいのに、と少しの不満が生まれる。言えばいいのに、というより言ってほしい、聞きたい。そんな思いが顔に出ていたのか、福井は私の顔を見ると一度大きく息を吸って吐いて再び私を見据えた。



「ずっと、好きなんだよ…」



少し上擦った声と緊張した表情がいつもの彼からは想像できなくて、つい笑ってしまう。
きっと私は、今まで自分の気持ちに気付いていなかった自分自身のことも笑っているんだと思う。ああ、なんだかスッキリした。目尻に残る涙を拭いながら、怪訝そうな顔をしている福井に一歩近付いた。



『すき、』



私のことを不器用だけど真剣に好いてくれる、いつも優しく見守ってくれる、愛しいって気持ちにさせてくれる温かいあなたが、心から大好きです。





ラブピース



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どっかの誰かさんが福井福井言うので
書いてしまった(2回目)

それにしても福井さんわからん…
口調とか何もかもわからん…
なんでもっと喋らんかったんや福井おまえ…
福井さんは優しそうだって
思いながら書いたらこうなってました。
福井(偽)みたいな感じになってしまいましたが
ちゃんと福井のつもりです。ごめん。

こちらも表記はしていませんが、
さおりんへの愛ということで^^


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