短編

□ぬぐたんへ!
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明日、13時にオレん家。

それだけが書かれた1通のメールに頬が緩んだのは昨日の夜。
家を出る前にもう一度そのメールを読み返して携帯を閉じる。
きっと、今家を出たら13時ぴったりに彼の家に着くよね。
私は玄関の鏡で軽く服装を整えると、お気に入りのパンプスを履いて外へ出た。

歩きながら見る彼の家までの景色は、なんだかいつもより鮮やかで。これから彼に会えるというだけで、こんなにも見える景色が違うものらしい。

楽しみだなあ、と思いながら歩くこと数分。若干の緊張と期待に心を踊らせながらインターホンを押す。ピンポーン、と音がなってから数秒後、彼のものだと思われる足音がドア越しに聞こえてきた。
そしてドアが開くと、予想通り孝輔の姿。



『こんにちはー』
「お、おう…」



ひらりと手を振る私に反して、なんだか少しばつが悪そうな表情を浮かべている彼に首を傾げた。家に入るよう促されて、玄関でパンプスを脱いでスリッパに履き替える。



『お邪魔します。』
「オレ以外にいねぇから。」



その言葉を聞いて少し緊張が解けた気がした。やっぱり面識があるとはいえ、家族に会うのは少し気まずいというか、緊張して変にドキドキしてしまう。



「その辺座ってろ。」
『うん。』



リビングに通され、私はソファに腰掛けたが、彼はすぐキッチンに向かってしまった。何か料理でもしているのだろうか。気になってこっそり後ろから近付いてみると、そこにはケーキのスポンジのようなものや、生クリームとその他トッピングに使う材料が揃っていた。



『…ケーキ?』
「うぉわっ!」



背後まで近付いていた私に気付かなかったのか、孝輔はひどく驚いた。そして観念したようにため息をついて頭をガシガシかくと私に向き合う。



「ほんとは、お前が来る前に完成させるつもりだったんだよ。」
『ん?私?』
「そーだよ。あーくそ、ダセェ…」



思ったより難しいのな、と困ったように笑う彼を見てようやく分かった。私のためにケーキを作ろうとしてくれていたんだと。あの孝輔が、私のために。



「はあ…」



大きな体でしゅん、と落ち込む孝輔が可愛く思えて、背伸びしてその頭を撫でた。いつもは抵抗するのに、今日は大人しく撫でられているのが可笑しくてつい笑いが溢れる。



「…何笑ってんだよ。」
『今日は抵抗しないのかと思って。』
「お前の誕生日だからな。今日は好きにしろ。」



そんなふて腐れた顔で言われてもなあ、とまた笑う。背伸びしている脚もそろそろ限界だからと彼の頭から手を離し、作りかけのケーキを見た。



『ね、一緒に作ろうよ。』
「は?でも、」
『いいからいいから。』



渋々頷いた孝輔と肩を並べて、スポンジに生クリームを塗ったりいちごを乗せたり。
そうして完成した、少しだけ歪なケーキをテーブルに運び、彼が向かい側に座る。



「よし、じゃあ食うか。」
『あ、待って!写メ!』



携帯を取り出してケーキを撮影。ケーキの向こうで密かにピースする孝輔の手がゴツくて、ケーキとはなんともミスマッチ。



『はい、おまたせ!じゃあいただきまーす。』
「あ、待て。」



えー、と言いながらケーキから孝輔に視線を移すと、彼がやけに穏やかな顔で私を見ているものだから驚いた。普段はそんな顔滅多にしないし、後輩達の前ではいつもしかめっ面なのに。



「誕生日、おめでとさん。生まれてきてくれてありがとな。」



目を真っ直ぐ見つめられて、少し照れ臭そうにはにかみながら言われたその言葉は、今まで誰に言われたおめでとうより特別な気がした。





Happy Birthday!
and Thanks always!





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Io bramo のぬぐたんへ捧げます!

福井先輩がいいのかなーとも思ったけど
やっぱりぬぐたんといえば
若松さんだったので
若松さん書きました〜!

お誕生日おめでとう。
いつも仲良くしてくれてありがとう。
大好きです。

ぬぐたんと出会えてよかったよ!
これからもよろしくお願いします。

2013.07.16



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