□甘く、とろける
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私の恋人は、真選組の副長である土方十四郎さん。
仕事もできるし顔も整っているし、どこに行っても自慢できる人。
でも、私には彼に関する悩みがある。

それは、彼が私に触ってくれないということ。
付き合うことになった当日は、軽い口付けを交わした。でも、それ以来何もしてくれないのだ。確かに私は彼より年下だし、魅力がないのかもしれない。それでも告白をしてくれたのは十四郎さんなのだし、私に非があるわけではない…と、思いたい。

正直私は自分に自信がない。あんなに素敵な人の隣にいて、きちんと釣り合っているのか疑問だし、彼が私に手を出してくれないのも相まってますます不安になる。


その悩みを抱えたときから、私は自然と十四郎さんを避けるようになった。

別に彼が嫌いになったとかそういうことじゃなくて、私が勝手に彼に対して気まずさを感じているだけ。

彼が私に話しかけようとすると、何かと理由をつけてその場を逃げてしまったり、彼と廊下ですれ違いそうになったときは急に方向を変えたり。勘の鋭い彼の事だから、きっと私の不自然な行動に気が付いてる。そう思ったら余計に彼と会うのが気まずくて、また逃げてしまう。それの繰り返しだった。

廊下を歩きながら十四郎さんのことを考えて、私の口からはため息がこぼれた。

すると、十四郎さんが前から歩いてくる。
私は慌てて近くの部屋に入った。



『ふぅ…』



部屋に入って襖を閉めて一息つく。
十四郎さんはもうどこかに行ったかな…と襖を少しだけ開けて確認しようとすると、そこには十四郎さんが立っていた。



「よう、名前。」
『と、十四郎さん…!?』



どうしてここに…と思う暇もなく、十四郎さんは襖を開けると私の肩を掴んで部屋に入ってきた。

彼は後ろ手に襖を閉めると、痛いくらいに私の両肩を掴んで私を見つめた。



『十四郎さん…?』
「…お前、最近おかしくねぇか?」



その言葉に、ギク、と反応する。



『な、何がですか…?』
「とぼけてんじゃねぇ!」



恐る恐る彼の顔を覗き込もうとすると、そう怒鳴られて叶わなかった。初めて彼に怒鳴られてびっくりしていると、次は優しく抱きしめられた。



『十四郎さ…』
「…お前、俺の事が嫌いになったのか?」



初めて聞く彼の弱々しい声。その寂しげな声に、私の胸はぎゅっと締め付けられた。



『そんなわけない…!』



私は彼の背中に手をまわした。



「じゃあなんで…俺を避けるんだよ…」



十四郎さんの顔が見えないけど、きっと彼は悲しそうな顔をしているのだろうと思う。
そんな顔をさせるつもりじゃなかったのに、と私は今まで彼を避けてきたことを後悔した。



『不安だったんです…』
「……」
『と、十四郎さんがその…私に触ってくれないから…もう私に飽きちゃったのかなぁ…って…』



私がそう言うと、十四郎さんは体を離し、私を見つめた。



「…それは、悪かった…」



申し訳なさそうに話す十四郎さんに、私はふるふると顔を横に振った。



「お前を大事にしたいって思ったら…なんつーか、なかなか手が出なくなっちまって…そしたら不安にさせちまったな…」



十四郎さんはそう言うともう一度私を抱きしめた。さっきよりも強く、それでいて優しく。



『いいんです。私も、十四郎さんのこと避けてごめんなさい…』
「…これからは、遠慮しなくていいんだよな?」
『え…っん!』



不意に私の唇がふさがれた。目の前には十四郎さんの顔があって、キスしてるんだと理解する。



『ふ…っんん…』



十四郎さんと前に一度だけしたキスよりも深くて熱くて、とろけそうになってしまう。
そんな口付けに耐えられなくなった私の体は、膝からガクッと落ちてしまった。



「おっと…」



私を抱き寄せて支えてくれる十四郎さんは、いつもより何倍も優しい目をしていて、私の胸はドクンと跳ねた。



「名前…」



私の名前を呼ぶと同時に再び重ねられる唇。
こんなに甘いキスは初めてかもしれないというほどに、甘くて幸せなキス。



『はぁ…っ、好きです、十四郎さん…』
「俺もだ、名前。」



好きだと言って笑い合って、また唇を重ねる。
泣きそうなくらい、私は彼が好きだと思い知らされた。きっと、もっと好きになっていくのだろう。






甘く、とろけるくらい

愛してください



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咲貴様へ!

リクエストに沿えたかどうかは
わかりませんが、
後半は頑張ってだいぶ甘くなるようにしました!

喜んでいただければ嬉しいです(^^)


リクエストありがとうございました!



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