□マイペースかつ自由な彼との距離
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「好きだ」



耳を疑った。でもこんな静かな場所で聞き間違いなんてするはずがなければ、冗談でもないらしい。彼の目はいたって真剣に私を見つめていた。

去年に引き続き今年も同じクラスになった七瀬遙くんは、普段からクールだし口数は少ないしマイペースで、正直言って何を考えているかよく分からない。そんな彼だけど、女子の間ではそこがいい、と密かに人気だったりする。これは彼の幼馴染みという橘真琴くんにも言えることで、橘くんもその穏やかな表情や雰囲気と優しい性格で女子の人気を集めていた。

いま私の目の前にいるのはそのうちのクールな方、つまり七瀬くんで、要するに私に告白してきたのも七瀬くん。私は驚きを隠せず、ただ突っ立って彼を見つめ返すことしかできなかった。



「…聞いてるのか」
『え、は、はいっ』



あまりにも私が喋らないから痺れを切らした七瀬くんは、僅かに眉を寄せて一歩こちらに近付く。彼とここまで距離を縮めたのは初めてで、なんだかドキドキしてしまう。うわ、目が青いんだなあ。



「……」
『あ、えっと…』



早く何か言え、とばかりに見つめてくるものだから気まずくて目をそらしてしまう。今さら告白されたという実感が湧いてきて、急に恥ずかしくなった。その恥ずかしさから、彼と距離をとりたくなってさりげなく後ずさろうとするも七瀬くんはそれを許してくれず、私の腕は彼にしっかり掴まれてしまった。



「…逃げるな。」
『ご、ごめんなさひっ』



…か、噛んだ。思わず七瀬くんを見ると、私から顔を背けていた。…肩を震わせながら。
さ、最悪だ、思いっきり聞かれたし笑われてる…!2人きりでこの仕打ちはもう恥ずかしくて寝込むレベル。いや、仕打ちもなにも私が勝手に噛んだんだけど…



「…面白いな、」



彼がそう言って見せた笑顔に、時が止まったような感覚だった。いつものクールな表情(というか無表情)からは想像できない、優しい笑顔に目を奪われた。



『……』
「…なんだ。」



七瀬くんの顔を凝視してしまっていた私は、いつもの無表情に戻った彼の声で我にかえった。び、びっくりした。あんな風に笑うんだな、まだ心臓がドキドキしてる。あ、あれっ。



『えっ』
「…?」



ドキドキって、まさか、私まさか。



「…どうした?」



突然顔を覗きこんできた七瀬くんに驚いて逃げたくなるけど、腕はいまだ彼に掴まれたままでそれは叶わず。ああ、顔が熱い。



「…顔、赤い。」
『…たぶん、七瀬くんのせい…』
「?」
『な、なんでもないっ!』



私の言葉が理解できなかったらしい七瀬くんは不思議そうな表情で首を傾げる。さらりと揺れる黒髪はやわらかそうで、つい触りたくなる。



「返事。」
『え、あの、』



私の腕を掴む手の力、私を見つめる真っ直ぐな目や真剣な表情に圧されたように、私は小さくよろしくお願いします…と呟いたのだった。




マイペースかつ自由な彼との距離

満足そうに微笑む顔が目に焼き付いて離れません。



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ついに手を出してしまいましたFree!
これからちょこちょこ書くかもです。


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