「恋文が一枚、恋文が二枚……」


手紙とおぼしい封筒を、一枚一枚びりびりに破いているのは蘇芳の恋人。

薪に火を焼べた側で異様な迫力を放っている静蘭に、蘇芳は恐る恐る近付いた。


「……なにしてんの、あんた」


後ろからそう声を掛ければ、静蘭は薄気味悪いくらい満面の笑みで振り返った。


「おや、タンタン君。ゴミを燃いているんですよ。一緒にどうです?」

「…それ手紙じゃねえの?しかも未開封……」

「恋文ですよ。定期的に燃やさないと溜まる一方で……」

「燃やすって……恋文を?それはさすがに酷くないか?」


湿った地面に平積みされた手紙を一枚一枚手に取って、可哀相になあ、と、蘇芳は首を竦めるが、静蘭はしれっとした顔。


「女性には丁重かつ紳士的に対応してますよ。しかし、むさい、臭い、暑苦しい武官たちから恋文を貰っても対応しようがありませんからね……」

「さいですか……」


どうりで殺気を放ちながら恋文を火にほうり込んでいるわけだ。

静蘭の本性を知らずに恋文を出してしまった武官たちに蘇芳は本気で同情する。そして何気なく、静蘭の足元に落ちている手紙を拾おうとして、その手を叩き落とされた。


「え、なに」

「…ここはいいですから、タンタン君は裏庭に置いている雑誌を取ってきて下さい。まとめて燃やします」

「でも、足元のそれ」

「タンタンくーん?早く持ってきてくれないと、大事なところを引っこ抜いて燃やしちゃいますよー?」


…極上の微笑で恐ろしいことをいう。

訳が分からない、と、首を傾げながら裏庭に向かう恋人に、静蘭はふう、と、ため息。

そう、まとめて燃やしてしまわなければ。





(タンタン君への恋文を!!)






炎の中で踊る手紙が自分宛の物とは、彼は知らない。


END

蘇芳×静蘭

タンタンは地味にモテると思うんですが!



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