短編
□ネタ帳まとめ
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目の前に迫る凶刃。
しかし、別段焦ることはない。
この程度の相手なら自力でねじ伏せられる。
大体。
空に見えた烏の姿が、そのしなやかな足から放たれた烈風が、心配を無に帰した。
「うぁ!」
目の前で風に潰される男。翻る裾を軽く押さえながら見下ろせば、凶刃は既に男の手から離れている。
呆気なく去った危機に、特に何かを感じることもなく。
ついと視線を動かして、こちらに背を向けながら地へ降り立った黒い少年に、ため息混じりに言った。
「遅いですよ、樹」
労いとは程遠い言葉のためか。
弾かれたように振り返った少年の顔は、怒気に溢れかえっていた。
そして守護者の怒声が響く
(何やってんだホモ眼鏡!)
(君の所に行こうとしてたんですよ)