短編
□ネタ帳まとめ
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見ていられない。
虚ろな黒で地面を見下ろし、逃げるように喋り続ける烏の姿が。
空を飛ぶことに全てを賭けているように思えたその背は、今や頼りなく見えた。
子供の背だった。
(どうして?)
「風の王」として舞い戻った男は、それほど彼の中で大切だったのか。
知り合ってそんなに間は無いと聞いていたのに。
これではまるで、何年もの間信じてきたかけがえのない人に裏切られたようではないかと。
つき合いがまだあまり長くない少女にすら違和感を与える、少年の深い絶望の姿。
疑念と共に少年を見やった瞬間、ふと彼はそれまでの呟きを止め――泣きそうで泣けない幼子を思わせる顔になり、虚ろな黒を悲しみに染め直す。
「そらにい」
小さな小さな呼び声は、途方に暮れた迷子のそれ。
「空」に捨てられた子供は
途方もなく暗い青を触る