頂き物

□たとえるなら色違いの空のような
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「――うん、悪ィ。つぅわけで、練習遅れるわ。多分、アイオーンも……。あー、もぉ! ちゃんと自主練すっから、そんな怒んなよ!! はぁ? 腰に気を付けろって? 何バカ言ってんだよ。いい加減、切るぞ」

じゃあな、と言って、耳から携帯を離した。
受話器の向こうでギャンギャン騒いでいるイッキを無視し、親指がボタンを押す。
ツーツーと響く音。
もう一度同じボタンを押し、閉じた携帯をポケットに押し込んだ。
イッキの奴、何が腰に気を付けろだよ。
意味わかんねーっての!
ンなとこ、ピンポイントで怪我するわけねぇじゃん。
釈然としない脳ミソを冷やすように、ローテーブルの上に用意されたコーラを啜った。
たっぷりの氷が爽快感を増幅させ、クゥッと満足げに喉が鳴る。

「さてと……」

一人掛けのゆったりとしたソファー。
身を沈めていたそこの背もたれに手をやり、後ろを振り返る。

(あーあ、まだやってるよ)

やれやれ、と俺は眉を下げた。
俺が電話する前からほぼ変わらず、火花を飛ばしまくってる二人。
先代・炎の王ことスピット・ファイアと、時の支配者アイオーンこと左やす……、何だっけ?
過去、コンビを組んでいたくせに、顔を合わせる度イミ不明な意地を張り合う『バーニン・ブラッド』。
そのアホすぎるやり取りは、巻き込まれない限りは見ていて楽しい。
ちなみに、今日のいがみ合いのネタはと言えば――。

「僕がカズ君と初めて会ったのは、夜王戦のときだからね。僕の方が彼とは長い付き合いだよ!」

「ハッ。どうせ会っただけでしょう!? 私は超獣時代、彼とバトルをしたんですよ。見ていたでしょう? 私と葛馬が語り合い、触れ合う様子を!!」

「うん、見てたよ。君がカズ君にやられる様をね」

「バトルは私が勝ちましたが!?」

と、まぁ。二人して古い話を引っ張り出して。
何が言いたいかというと、『どちらが先に恋をしたか』らしい。

――バカだろう、お前ら。

つーか、俺はスピと、その……付き合ってるわけだから、どう言ったところでアイオーンに勝ち目はない。
なのにわざわざこうして部屋にまで来て、スピに挑んでる。
俺よかコイツの方が、よっぽどツンデレだろ!
心の中で突っ込みを入れたそばから、お決まりのツンデレ科白を吐くアイオーンを想像してしまった。

(違和感なくて、逆にキモいって!)

危なく噴き出すところだった。
両手で口を押さえ、必死で笑いを殺す。
やべ、無理。
腹いてーって!
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