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□王は手駒を捨て
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けれど空は、伸びてきた手が届かない距離に立ったまま、言葉を続けた。
用済みの手駒の最期を、弄んでやる為だけに。


「自分のおかげで、アイツら全員死におった」


浅く速い呼吸が、段々と緩やかになる。
耳を傾けているらしい姿に、噴き出してしまいそうだ。


「玉璽も全部回収できたし、これもみぃんなお前が気張ってくれたからや」


空との絆などという存在しないものの為に必死になって、まんまと使い勝手のいい手駒となってくれた愚かさのお陰だ。


「ありがとなぁ、宙」



どうしようもない馬鹿でいてくれて。
震える声で礼を述べて、内心でそう嘲る。

ちなみに、声の震えは隠しきれなかった罪悪感から――などではなく、先ほどからこらえている笑いの為だった。


追い風が吹き、漂う血の臭いが薄くなる。
帽子を飛ばされないよう、手で咄嗟におさえた。

弟の呼吸は、少し強く吹く風の音で消えてしまうほど弱々しい。

もう死んだのだろうかと、地に伏せたままの宙を見る。
わななく唇が生きていることを示唆していて、早く死なないものかと思った矢先だった。


「……そ、ら」


ひびわれた、精気のない声。



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