ネタ帳

突発的な小話や連載ものの断章を載せます。
ネタ帳内でシリーズ化している設定のシリーズ名は下記の通りです。

年齢逆転→求めるは高き「空」
樹創世神側設定→率いるは嵐
吸血鬼→夜に踊れ不死の者共
双子ネタ(一緒に生活してる版)→烏と死神
葛馬×樹で個々にチーム持ちな高校生ネタ→高め合え炎と嵐
樹と旧「眠りの森」立場逆転で樹が養い親ネタ→種々の雛鳥

これまでのネタを見たい方は、こちらからどうぞ。
ネタ帳まとめ


◆じっとA・Tを見つめてくる、好奇心で輝いた真っ黒な瞳。 

「塔」の中にはまるで似合わない純真なそれにやや身を引くと、離れたA・Tを追うにして瞳の持ち主――一歳かそこらの黒髪の幼子が、よたよたと歩み寄ってくる。
しまいには、何に触れているか分からない手で触れようとさえしてきたものだから、子供は咄嗟に幼子を抱き上げた。

抱き上げられた幼子はきょとんとするも、目的を達成できなかったことに気づきすぐさま不機嫌になる。
泣かないのは助かったが、可愛くない反応であった。


とりあえず、言葉が通じないとわかっていながら話しかけてみる。


「そないにおっかない顔しても触らせんからな」

「う゛ー……」

「これは、自分が触ってええようなもんとちゃうん、や!」

「うぁ!」


言いながら、誤魔化すために高い高いをしてやった。
最初こそ驚いた顔をした幼子だったが、上下運動が楽しいのか、けらけらと笑い出す。

こういう素直さは可愛らしいと、珍しく思えた。


それから2、3回繰り返して更に喜ばせてやっていると、ふと通路の反対側から1人の研究者が走ってきた。
何事かと思い手を止めれば、腕の中の幼子が不満げな声を上げる。


「なんや自分。そないに焦ってどないしたん?」

「その子を、探してたんだ……目を離すとすぐ、いなくなっちゃって」

「このガキ、自分とこのガキやったんか」


息も絶え絶えといった体の研究者を見ながら目を丸くし、こちらを見上げる幼子を見つめた。
そういえば顔立ちが似ている気がする。

しかし研究者は、「書類上はね」と返してきた。


「俺との血の繋がりはないよ。むしろあるのは君達のほうだ」

「は?」


「その子は、歴とした君達双子の弟だ」


ちなみに名前は樹君だよ、と軽い調子で衝撃的なことを宣う研究者に、呆然とする。
見上げていた幼子は、たった今自身の弟だと発覚した存在は、そんな様子に小首を傾げた。



(空+樹+南のおっさん、禽獣の縁。出会いはこんなものかなーと思いながら書きました。幼児な樹とちび空さんとか可愛いくないですか。
雛との出会い)

2010/11/25(Thu) 08:50  コメント(0)

◆そんな俺等は獣のようで 

自らが得た「炎の王」の座を賭ける、初めての勝負。
覚悟を持って譲り受けたとは言え、こうして明確に守らねばならなくなったのは初めてだった。

だからなのか、その夜は酷く緊張して――そんな緊張をいち早く嗅ぎ取ったのは、既に「嵐の王」として名を馳せていた幼馴染だった。


「っ」


人通りも少ない路地。
胸倉を掴まれて強制的に連れてこられたと思った瞬間、無理矢理に合わさった唇。

合わさったというよりぶつかったと言った方が似つかわしいそれは、しかし滅多にない幼馴染からの行為で、目を見張った。


ただ合わさっただけの唇は、即座に離される。
間近にある爛々とした漆黒は、自ら舞い上げた欲を抑えようと、必死になっているようにも見えた。


「……これ以上のことやりてぇって言うなら勝て」


命令口調な条件。
けれどそれは、平たく言ってしまえば――褒美と同じものだ。

そう思った瞬間、無言で首を振った。
こんなにもあからさまな褒美に対して、頷けない者がいるだろうか。


不安が消え去った訳ではない。
けれど、先ほどよりは確実に安心した。

――と、落ち着いたところで自分のある変化に気づき、両眉が下がった。
恐らく今、かなり情けない顔をしている。


「イッキ……」

「んだよ」


片眉を上げての問い返しに、情けなくなりながら口を開いた。
言った瞬間殴られるだろうなと思いながら。


「………………たった」



(葛馬×樹、高め合え炎と嵐。攻め攻めしい受けが好きです。最後の台詞が平仮名なのは仕様。この後葛馬は蹴飛ばされたんじゃないかと思います、どこをとは言いませんけど。題名は片恋的蜻蛉さんから。
欲を満たす為に戦う、人らしさなど皆無だ)

2010/11/17(Wed) 09:56  コメント(0)

◆「カスだな」 

月が高く上がった、深夜。
静かであるにも関わらず叩き潰すような罵倒に、美鞍葛馬は肩を大きく震わせた。

恐る恐る見上げた先には、幼馴染にして、現在入院中の「小烏丸」リーダーの双子の兄が居る。
弟に対してはあまり向けない、威圧感を剥き出しにした雰囲気を出している彼は、見上げた葛馬の顔を睥睨し、舌打ちした。


「仮にもリーダー任された奴とは思えねーなぁ? てめぇ今まで何してやがった。バトルに勝てないばかりかエリア取られるとかよ、生きる価値ねーんじゃね? もうお前、ウッスィーくなって消えろよ」


絶対零度の罵詈雑言が、夜の空気を更に冷やす。
最早葛馬に認識する価値など無いと言いたげに葛馬を見ない姿は、様々な意味で堪えた。

しかし、バトルに出ていない者にここまで言われるのも癪だ。


「そんなに言うなら、お前が出りゃよかっただろ」

「今日はホモが出てただろうが。助っ人は1人、そんな決まりも忘れたかカス」

「だから、お前がイッキとして」

「おい」


言葉が途中で遮られたと思った瞬間、高い位置に座っていた彼が目の前に立っていた。
スピードにある程度自信がある葛馬でも追えないような速さに目を見張ると、底冷えするような無慈悲な光を宿した射干玉が睨めつけてくる。


「……そんなに潰されてぇか?」


平坦な調子の、静かな声。
それが逆に不気味さを増させて、葛馬は気圧されたように口を閉じた。



(葛馬+タツキ、烏と死神。イッキ入院中の負けについての話。タツキは基本容赦ないですが、出来ることが出来ない人や覚悟のない相手には特に容赦しません。あと「イッキの代わりに出ろ」発言は色々な意味で地雷。
逆撫でるな神を)

2010/10/14(Thu) 08:33  コメント(0)

◆来たるべき戦い 

眩い照明を全て吸い込むような黒衣。
無骨な感が否めないゴーグル。
左胸に刻んだ八つ足の駿馬。
両足に纏った「翼」。

前回優勝チームの最後のメンバーであるその人物に、「小烏丸」の面々の中で見覚えが無い者など居なかった。
予想だにしなかった相手の出現に絶句する彼らを、件の人物は口の端のみで笑い、目深に被ったフードに手をかける。


「言っただろうが、イッキ」


彼は言った。
取り払ったフードの下から露わになった、「嵐の王」と酷似した烏羽の髪を見せながら。


「『今日ばっかりは』」


ゴーグルを外し晒した、闘志に光る射干玉の双眸で見据えながら。
今宵の「小烏丸」の敵にして、最も得体の知れない「王」であった「凪の王」――南樹(たつき)は傲然と告げた。


「『お前らの味方じゃいてやれねぇ』ってな」



(タツキ+小烏丸、烏と死神。前から書きたかったスレイプニール戦。この設定のタツキはスレイプニール戦まで「王」であることをひた隠しにしています。
対なる「王」よ、相対すれ)

2010/10/12(Tue) 08:52  コメント(0)

◆その距離、僅か一歩 

夜。
戦いの前兆と暴風族達の間で囁かれている紅い月は、煌々と全てを照らしていた。

寝静まった街も。
立ち竦む己も。
「嵐」の爪痕が残る地に倒れている人間達も。
誰を見ることなく佇んでいる「空の王」も。

酷なほどの明瞭さで、照らしていた。


浮かび上がった現実は、「炎の王」である自分であっても、理解し難いものだ。

倒れている人間達が一様に身につけている族章には、見覚えがある。以前、一度バトルをしたチームのそれだ。
珍しく果敢に挑んできたチームで、久しぶりに満足したバトルが出来――今、目の前で沈黙を貫く「空の王」も満足げだった。


なのにこれはどういうことだ?
何故目前の「王」は、このチームを壊滅させた?


頭の中で、ぐるぐると疑問が巡り続ける。

少しでも答えが欲しい。
そう思いながら、幼馴染の名を呼ぼうとした。


「イッ」

「つまんねぇ」


しかし、意を決した呼びかけは、「帝王」とすら呼ばれるようになりつつある相手の呟きに遮られる。
同時に此方へ踏み出してきた「空の王」は、今宵初めて自分と視線を交えたが――。

その漆黒の双眸が映す貪欲な闘争心に。
その顔に浮かんだ多大な絶望に。
その身から向けられる剥き出しの殺意に、今度こそ動けなくなった。

完璧に硬直した自分など気にも止めず、飢えた獣の唸りを思わせる言葉は続く。


「つまんねぇ」

「どいつもこいつも戦わねーで、逃げてばっかじゃねぇか」

「もっと強い奴はいねーのかよ」

「つまんねぇ」


歩み寄ってきながらそう言った「王」は、すぐ隣まで来て言葉を切ると、不意に耳元に顔を寄せ。

ぞっとするほど冷たく、けれど楽しげな声音で言う。


「やっぱ一旦、全部ぶっ壊しちまった方がいいか」


言葉の中に潜む狂気に、息を呑んだ。
その隙を逃さないように、「空の王」は横を抜け立ち去っていく。

振り返ることすら出来ない自分を、紅い月光が静かに焼いた。


全てを壊そうとするほどに。
それほどまでに敵を求めるかの「王」を、追える自信は無かった。



(葛馬+樹、求めるは高き「空」。樹が荒れていた時期の話。このシリーズの葛馬は通常よりも情けない仕様です。
歩み寄れなかった足は、二度と埋まらぬ溝を生む)

2010/09/28(Tue) 10:40  コメント(0)

◆鴉と犬 !戦国バサラとのクロスオーバーネタです 

琥珀色の蜜がかかった、実に食欲をそそる団子へ手を伸ばした瞬間、南樹は視線を感じた。

殺気立ったものではない。
どちらかと言えば、強い羨望が入った視線だ。


大方菓子を食べたい子供でもいるのだろうと思い団子を手に取れば、背後から息を呑む音がする。
しかし樹はあえて無視して、団子を頬張った。

見せつけるようにゆっくり咀嚼すれば、低い悲鳴が聞こえる。


(……ガキじゃねえな?)


今の声、どう聞いても自分より年上の人物の声だ。
不思議に思って振り返れば――そこには犬が居た。

訂正。
犬を思わせる青年が居た。

薄墨色の着物と袴をまとっている樹とは対照的に、それほど目に痛くない赤い着物を着ている。長身で細身だが、必要な筋肉のみついているようで、しなやかな印象を受けた。
栗色の髪を襟足だけ伸ばした髪型に、今は狼狽しているが、真顔になれば凛々しいだろう顔。

いたずらを見つけられた犬のように慌てふためきながら、青年は口を開く。


「し、失礼した! その団子があまりに旨そうでつい不作法に見て申した!」

「はぁ……」


口から出てきた、いかにも武士といった口調と予想外の声量に目を瞬かせながら、樹は生返事を返した。
そんな樹に、青年は更に言い募る。


「某(それがし)も一応食べるには食べたのでありますが、そのぉ……」

「……食いたりねえんだな?」

「……情けないことに」


言って項垂れた青年に、叱られて耳と尻尾を垂らす大型犬の姿が重なった。
某金髪碧眼な割に影の薄い同級生以上に分かりやすい犬気質である。


(カズが飼い犬なら、コイツは番犬とか猟犬っぽいよなぁ)


今でこそ情けない体を晒しているが、この青年が弱いとは思えない。
――どちらにせよ、この人懐っこさでは駄犬とされるだろうが。

内心で結論づけながら団子を黙々と食べる。切なそうに物欲しそうにした青年の視線が注がれた。


しかし樹には、こと食べ物に関しての寛容さなど無い。
常時欠食児童を嘗めるなと言わんばかりに団子を食べ続ければ、耐えるように唇を噛む青年の姿が伺えて、中々愉快だった。



(幸村+樹、団子屋での出会い編。この後佐助も出てきます。
虎の若子との出会いは、後に戦の種火となるか)

2010/09/26(Sun) 11:42  コメント(0)

◆只今乱闘5秒前 

捲り上げなければ邪魔だといえる袖。
同じく余りすぎている胴の部分。
止めといわんばかりに、太股の半分ほどを隠す裾。


それら諸々を確認した南樹は、沸き上がる苛立ちを隠しもせず、自分が座っているベッドで寝ている武内宙を睨んだ。


久しぶりに帰国を果たしたこの男は、自身の兄である武内空の家に自室を持っていない為、帰国中は空の部屋か樹の部屋へ置いている。
どちらの部屋へ置くかは厳正なるジャンケンで決める。あまりに真剣に宙を押しつけあっている姿に宙本人が泣いている事実は割愛しておこう。

とにかく、今回は樹が負けを喫し宙を部屋に置いた。
そうなれば必然、夜がどうなるかは分かっているもので。特に帰国後すぐの宙は欲求不満もいいとこであり、樹はその相手をした訳だ。


そんな夜が終わった後、目覚めて自分の服を見てみれば、昨夜の痕跡を色濃く残し、悲惨極まりないことになっていた。
秋が始まったばかりと言えど、朝は中々寒い。だからそのすぐ傍にあった宙の上着を拝借したのだが――結果、歴然とした体格差を見せつけられた訳である。

そこで浮かぶのは、相手の体格に対する羨ましさと、男としての悔しさだ。


「………………」


いつになく強い眼光で、上半身裸のまま大の字に寝ている宙を睨む。
寝ていて尚存在を主張する筋骨隆々な身体が、恨めしくて仕方ない。


ゆっくりと、ベッドの上に仁王立ちした。下半身の違和感だの怠さだのは、今だけ彼方に追いやっておく。
そうして狙いを定めた後、ベッドのスプリングを軋ませ、呑気に寝ている恋人へ一撃を食らわせるために、樹は飛んだ。


男には、無意味だと分かっていても戦わねばならない時がある。



(武内兄弟×樹、率いるは嵐設定。私が彼シャツネタやるとこういう残念な感じになります←
いっそ息の根止めてやる!)

2010/09/24(Fri) 12:22  コメント(0)

◆逆鱗 

「時の支配者」と「雷の王」、「雷の王」の調律者がその場所に辿りついた時、戦いは既に終焉を迎えていた。


舗装された道は無残に抉られ、周囲の建物にも同様の傷跡――「道」が刻まれている。
まるで、風をまとった死神が嬉々として踊り狂った軌跡のようだ。

3人はその惨状を暫く見つめていたが、やがてゆっくりと、更に戦禍の爪跡が濃い場所を見つめる。
もはやひび割れ、徹底的に破壊し尽くされた道。クレーターの形になってしまったそこには、1人だけ人が立っていた。


黒衣をまとい、烏羽色の髪を持った人物。
先日、名実共に「創世神」総長と認められ、「疾風の狼」と「石の王」の実弟という秘密を持つ少年だ。

少年は、「翼」を身につけたしなやかな足でもって「雷の王」を襲った「角の王」を容赦なく踏みつけている。
そして、怒りにより爛々と輝く黒い双眸と、瞳孔に浮かぶ十字を3人に向け、口を開いた。


「遅ぇよ下僕共」



(樹+左+鵺+ガビシ、禽獣の縁でガビシ編没ネタ。このシリーズのイッキだったら制止する間もなくガビシを叩き潰しに行くだろうなと思って考えたもの。
夜に逆巻く憤怒の嵐)

2010/09/22(Wed) 00:01  コメント(0)

◆猛獣二匹、猛禽一羽 

ソファーに視線を見やった時、仕事の緊張感から解放されたばかりの宇童アキラは、一瞬息が止まるかと思った。

ソファーに見えるのは、大きめのシャツを一枚適当に羽織って眠る黒髪の子供。
気絶したように深く眠る子供の、細い身体の目につく部分には――刻み込むような噛み跡や、蚯蚓張れがあった。


「カラス!」

「……んだよアキラ君」


叫ぶようなアキラの呼びかけに、少年――夜の街で「カラス」という呼び名を与えられ、春をひさいで生きていた南樹は、強い眼光を持つ漆黒を眠たげに揺らし、けだるそうに口を開く。


「帰ってきていきなり叫ぶなよなぁ……」

「わ、悪いカラス……って違うだろ! とにかく風呂入れ、今すぐ入れ!!」


こんな惨状、樹を拾ってきた張本人が見たら、何が起こるか分からない。
しかし当の本人は、瞼を緩やかに上下させながら呑気に言う。


「わかったから……もうちょい寝てから風呂入っから……」

「その恰好で寝てるつもりだったのか?!」


てっきり襲われて、気絶でもしてたのかと思った。
そんな驚きを見せれば、流石の樹も不審になったのか、自分の現状を見下ろす。


「恰好ォ? ……うわ、またやりやがったなあの男女」

「また……いやそれより、男女って……」


まさかと思い樹へ問いかけようとした瞬間、ふと背後から影が差し、顔の横から伸びてきた白く長い腕が――樹の首を掴んだ。
その細いが華奢ではない腕に心当たりのあったアキラは、恐々振り返る。

そこにいたのは、長い銀髪を靡かせ、見事に整った顔を凶悪に歪ませている男。
烏を拾ってきた張本人であり○風室長でもある、鰐島海人だった。


アキラがその凍てつくような視線に晒され硬直する一方、掴まれた樹は「げ」とあからさまに声を上げた。
しかし海人はそんな2人の反応を無視すると、樹をそのまま引きずっていく。


そして海人が入っていったのは、浴室だった。
派手な音と共に閉まった扉の向こうから、会話が漏れる。


『いってェな海人、何すんだ』

『目が覚めねェんだろ? 協力してやるよウンコガラス』

『笑い方キモっ! つかちょっと待てテメェ水は……ぎゃあああああああああ!』


立て続けに響く悲鳴と水音から、どうやら容赦なく水をかけられているらしい烏を、超獣は心底哀れんだ。



(海人×樹+アキラ、前書いた売春ネタの続き。この後アキラ君も苛められたんじゃないかな。
夜に潜んだ獣の話)

2010/09/06(Mon) 15:27  コメント(0)

◆スカートめくりを許せ !女体化注意 

この日この時この瞬間、武内空は何時になく真剣だった。

視線の先に居るのは、1人の少女。
空の親友である野山野梨花の妹であり、空が「翼の道」の走り方を教えている相手でもある、南樹。


学校帰りである為にセーラー服を纏った樹の後ろ姿を見据えながら、空は集中力を最大限に高める。
そうして、狙うべき一点を見つけた瞬間――両の手で動かした風を、少女の足下から吹き荒らさせた。


「うおっ!」


女らしからぬ悲鳴と共に翻ったプリーツスカートから覗くのは――色気など皆無のスパッツ。
そのつまらない結果に、空は不満げな顔をして言う。


「何スパッツなんて穿いてんねん!」

「たりめーだろうが! こちとらこれで毎日A・Tやってんだ、スパッツくらい穿くっつうの!」

「女なら紐かTバックやろ!」

「あんな頼りねえもんパンツじゃねえよ!」


顔を真っ赤にして言う樹に、空ははっと驚愕した。
今の彼女の発言から察するに、あの名言を知らないらしい。

だから空は、確認する為に恐々と言う。


「『パンツじゃないから恥ずかしくないもん』ちゅう名言を知らんのか……?!」

「知らねえし教えんな!」

「そんでもって、頼りないちゅうことは穿いたことあるんやな?!」

「あるかボケ! 見た感じからだ!」

「そんならいっぺん穿いてみぃ、きっと病みつきに」

「死ね!」


風のように素早い少女の足技が、空の顔面を容赦なく襲った。



(空+樹、題名は片恋的蜻蛉さんから借りました。樹が女だったらこんな感じだったんじゃないかと思って書いたアホ話。)

2010/09/01(Wed) 15:18  コメント(0)

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