ネタ帳
突発的な小話や連載ものの断章を載せます。
ネタ帳内でシリーズ化している設定のシリーズ名は下記の通りです。
年齢逆転→求めるは高き「空」
樹創世神側設定→率いるは嵐
吸血鬼→夜に踊れ不死の者共
双子ネタ(一緒に生活してる版)→烏と死神
葛馬×樹で個々にチーム持ちな高校生ネタ→高め合え炎と嵐
樹と旧「眠りの森」立場逆転で樹が養い親ネタ→種々の雛鳥
これまでのネタを見たい方は、こちらからどうぞ。
ネタ帳まとめ
◆二月、梅は寒さを笑う
背にあった襖が、けたたましく開かれた。
闖入者の登場に驚いた樹は振り返ろうとしたが、それより早く背後から伸びてきた手に顎を掬われ。
見上げた視界を占めた、血色を思わせる紅にぎょっとする。
襖を壊さん勢いで開き入ってきた相手は、深紅の着物と、これまた深紅の頭巾を被っていた。
唯一垣間見える黒い双眸は、樹を値踏みするように見下ろしている。
「誰だお前、離せ!」
「…………」
今まで終ぞ向けられたことのなかった色の瞳に居心地の悪さを感じ、怒鳴りながら身じろぐ。
しかし深紅の頭巾を被った相手は、無言のまましっかりと顎を捕らえたままだった。
向かいに座っている父へ珍しく助けを求めるも、何故か笑顔を返されるのみだ。
そういえば、何故父は闖入者に何も言わないのだろうと。
思いながら更に抵抗しすば、不意に手を離され自由になった。
「威勢の良さそうな餓鬼やないか。まだちっさいし、これならええわ」
数度聞いたことのある、上方の訛。
声の響きは男というには低くなく、どちらかといえば少年に近かったが、しかし今の樹にそれを気にする余裕はなかった。
全く意味が分からない言葉にただ眼を瞬かせれば、父の機嫌が良さそうな声が聞こえる。
「今年で七つになります。元気がいいのは俺が証明しますよ」
「行儀良さに関しては及第点やけどなぁ。これから仕込めば使えんこともないやろ。感謝せえよ自分、ワイは基本女しか買わんのやから」
「『餓鬼が足らんから買うてこい』言われんかったら、自分とこの餓鬼買うたりせんで?」
「……は?」
声に出た疑問符は、許容を越えた現実に対して。
それを耳にした深紅の頭巾の男が、何を今更と言いたげに見てきて、更に困惑した。
「おやじ?」
「ごめん樹君」
父は。
少しもすまなさそうでない顔で、諭すように言う。
「研究の為に借金したら、かなり危なくなっちゃってね」
「かと言ってうちには金目の物もない。――そうなると、俺が唯一持ってる売れそうなものが君しか居なかった」
「だから樹君。借金の為、俺の研究の為に売られてよ」
(宙+南親子、陰間パロ。南のおじさんが結構酷い人ですが、私の中ではこんな印象。
鳥は鳥籠に入れられた)
2010/11/29(Mon) 10:06
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