小谷の姫
□再会の華
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……しかし。
城下で、とある家に人だかりが出来ているのに気が付いた私は、ふと足を止めた。
「……何があったのだ?」
「あ、おはようございます、殿様。……それが、明朝表に出た所、妙な衣を纏った娘が倒れていて……。見殺しにするのも気が引けましたので、某の家で看病していたのですが……。噂を聞きつけていつの間にか多くの者が集まってしまいまして」
「そうか。……して、その娘というのはどこに」
「奥です」
家の主に案内されて、私は家の奥へと向かった。
――その娘を見たとき、私の心はなぜかさざめいた。
整った顔、長身、白い肌……。
「そなたは、いつかのあの花なのか……?」
確かに、纏っている衣は奇抜ではあるが、決して粗悪な品ではなさそうだ。どこかの姫だろうか。
「……この娘は私が預かる。表に居る者達にも伝えよ。娘は、この私……、淺井長政が引き取った、とな」
「は……、はあ。しかし何故?」
不思議そうに問う家の主に一言「花だ」とだけ言って、私は娘を抱えてその場を去った。
「さようならっ!!」
――目を覚ました娘は、そう言い残して部屋を去ってしまった。
「……お市」
私は彼女の名を呟いてみた。お市……。良い名だ。
しかし、聞いた事はない。
「――まあ、良い」
彼女には、また逢えそうな気がしたから。