小谷の姫

□とある少女の憂鬱
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カリカリカリ……。


 部屋には書く音だけが響く。……そもそも、どうして書く音を「カリカリ」って言うのかも分からないけど。
 それにしても……、どうしてテストって面倒なんだろう。そりゃ……、このテストで、自分のその後が決まるのは分かるよ?分かるんだけどさ……。
 あ、大切な、自分の名前書き忘れた。危ない危ない……。こんな事で零点なんて取ったら、進学できなくなっちゃう。



 小川 市乃(オガワ シノ)



 ……名前書いたは良いんだけど、さ。私、社会――特に日本史――なんて大の苦手でさ。もう、嫌っ!!
 今開いているページに、誰かの顔が出てる。着ている服の感じから、戦国の人ってのは分かる。……でもコイツ、一体どちら様!?
(あーっ!!もう分からんっ)
 イライラは頂点に達し、私はその人物の顔を思いっ切り真っ黒く塗りつぶしてやった。

 ふと、写真の下に名前が書いてあることに気付いた。
(……アサイナガマサ?)
 誰ソレ。

 ……まあ、別に良いか。



 テストの終わりを告げるチャイムと同時に、シャーペンを机に置く音と、誰かの溜息が聞こえた。
 誰の溜息だか知らないけど、私も溜息つきたいです。


 それ位、テストの出来がわるかったんです。本当に。
 見まわせば、みんなテストの出来に一喜一憂してる。……あれ?一喜一憂って、使い方違うっけ?
 とにかく、日本史のテストは終わった。それに伴い、二学期の期末テストも全て終わった。ありとあらゆる意味で。

 ……さて。テストも終わった事ですし、駅前のパン屋にでも寄ってさっさと家に帰ろうかな。
 

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