小谷の姫

□とある少女の兄者
1ページ/4ページ

 所移って、織田邸――。

「阿呆者!久々に本家に顔を見せたかと思えば、妙な娘を拾ってきて……」
 とある女性の言葉だ。

「しかし母上。……母上はこのように身よりのない娘を捨ててくるのが織田家の美徳とでも申されるのか」
「そうです。しかもこのような美しき容姿。身長もすらりと高い。……母上、もしかして羨んでます?」
 つかさず、信長ともう一人の男性が言い返す。
「っ、信包(ノブカネ)まで。……勝手になさい」
 目の前の女性――土田(ドタ)御前は、ぷいっとそっぽを向いて、
「空いている部屋はあったであろうか?」
 とだけ言った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ