小谷の姫

□とある少女の決断
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 二年後……。

 大分こちらの生活にも慣れ、最初はうざったかった和服もようやく様になり始めた今日この頃。兄者の住まう清洲城に居候している私に、急に兄者からのお呼び出しが掛かった。

「兄者、改まって呼び出しなど、どうされたのですか?」
 襖をそっと開け中を覗き込むとそこに、兄者が居た。
「おう、市。待っていたぞ。中に入るが良い」

 兄者は見ていた書類らしき紙から視線をこちらに向け、微笑んだ。
 私は一礼してから入室、襖を閉めて、兄者の傍らに座る。
「さて……、急に呼び出したりして悪かったな、市。どうだ?清洲城(ここ)での生活は」
「はい。皆さん優しく接してくださいます。とにかく色々な事に不慣れな私に、一から教えてくださって……」
 兄者はそれを聞いて、そうか、と言って頷いた。
「それで、話とは一体何です?」

「うむ。……、市。浅井に嫁ぐ気は無いか?」
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