小谷の姫

□とある少女の不安
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 ――淺井長政。

 どこかで聞いた事がある気がする。というかむしろ、逢ったことがある気さへする……。

 だから小谷の城下を見たときも、素直に「ああ、ここか」と思った。


「……懐かしいな」
 不意に、兄者が呟いた。
「……はい?」
 傍らを歩く兄者の顔を僅か見上げると、視界に眩しい太陽の光が差し込んだ。

「お前と始めて逢ったのがこの城下だったろう」
 ――そうか。だから、見覚えがあったのか。
 という事は、私の旦那となる相手は、あの、タイムトリップして来た私を保護してくれた人……。確か、そうだ、彼も「淺井長政」だった。

「あの時は、お助け頂き、ありがとうございました……」
 ぺこりと頭を下げると、その頭に兄者の暖かくて力強い掌が乗せられたのを感じた。
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