小谷の姫
□とある少女の不安
1ページ/2ページ
――淺井長政。
どこかで聞いた事がある気がする。というかむしろ、逢ったことがある気さへする……。
だから小谷の城下を見たときも、素直に「ああ、ここか」と思った。
「……懐かしいな」
不意に、兄者が呟いた。
「……はい?」
傍らを歩く兄者の顔を僅か見上げると、視界に眩しい太陽の光が差し込んだ。
「お前と始めて逢ったのがこの城下だったろう」
――そうか。だから、見覚えがあったのか。
という事は、私の旦那となる相手は、あの、タイムトリップして来た私を保護してくれた人……。確か、そうだ、彼も「淺井長政」だった。
「あの時は、お助け頂き、ありがとうございました……」
ぺこりと頭を下げると、その頭に兄者の暖かくて力強い掌が乗せられたのを感じた。