小谷の姫
□とある姫君の涙
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「長政様……!!」
「市、探したぞ」
城内の曲がり角で、お互いを探していた私と長政様はばったりと出くわした。
「長政様、あれはどういう意味ですか!?なぜ私に事前に話して下さらなかったのです!?」
「市、まずは落ち着け。その件は私も悪かった。だから一旦部屋に戻ってくれ!風邪をひくぞ!!」
長政様は単を一枚羽織っただけの私の肩を掴んで、軽く揺さぶった。
「落ち着いていられますか!!長政様に、そそそ、側室が……。しかも祝言の日取りがもう決まっていらっしゃるとか!!」
「だからまずは落ち着け……。私が悪かった。部屋で詳しく説明をするから、とにかく早く部屋に戻ってくれ……」
長政様は手を離して、目を伏せた。……あれ、困ってる?
「……絶対説明してくださいね」
私はしぶしぶ部屋に戻る。長政様も数歩遅れて後ろからついてきた。
部屋に入ると、長政様は部屋には入らず自身の手で戸を閉めた。