黎明の魔術師

□uoknown
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静寂を破る禍の音 2



「さて……、と」

 その女は妖艶に微笑んだ。

「そろそろ、かしら?」

「そうだね、今頃青の隊が、魔研を足止めしているだろうね。まあ……、彼がこちらの本当の狙いに気付いているとは思えないけど」

 答えるのは、女と大して歳の変わらない男。



「あの男は……、私の全てを奪ったのよ。だから私も……、全てを奪ってやるわ」

「全て、かい?」

 男は怪訝そうに訊ねる。

「そうね、全てといえば嘘になる。でも……、同じようなものだわ」

 女の憎悪に満ちた瞳を見て、男は彼女の決意が数年前のあの日から、一切揺るいでいない事を知る。

「君は……、変わっていない、本当に」

「そう言ってくれるのもあんただけよ」

 だって、昔の私を知るのはあんただけだもの、と女の声は続いた。

「……いつまで過去に囚われる気だい」

「復讐が終わるまで、いつまでも。私を動かすものは、全てその過去だけだもの」

 男は何か言おうとして、止めた。

 代わりに、その時が来たのを告げる。




「……さあ、そろそろ時間だよ」

「そう。……行きましょう」

 女は応じて、ふっと微笑んだ。

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