Novel

□鳴泣鳴
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#鳴泣鳴...


「――っ…んっ…く…」

僕は今、湊の首筋を咬んでいる。首から流れ出す血は綺麗だ。血を舐めるたびに鳴く湊の声が僕を本能へと誘う。
首についている鍵を開けることは容易い。鍵は僕が持っているのだから、開ければ僕のつけた跡が残ってる。赤黒くついた跡は中々消えない。消せない。僕がつけた思いと憎しみが湊に絡み付いているからそう簡単にはとれないんだよ。

「助けてほしい?」

僕は湊に問う。痛くすることで生きることに自覚する湊は欲する。頷く湊の顔には涙が一筋流れた。

「―っ…アッ…」

湊は口から涎を垂らし、気を失った。首をネクタイで絞め上げ気を落とす。いつも最後はこれで湊は終わる。絞殺を求めている訳ではないけど湊の絞められている顔が笑ってる。嬉しそうに見て笑う。僕はその顔が何度も見たくていつも首を絞める。咳込みながらも、湊は絞める強さを求めた。僕の触れている手に爪を立て合図する。滑稽な姿だが、僕は美しく見える。
気を取り戻した湊はいつも云う。

「また、やろうな…」

湊の首には赤黒くついた跡と、ネクタイが巻き付いていた。さっきまで気を失っていたのに、次またやることしか考えていない湊。

「なぁ、駄目?」

甘えてくる湊が愛おしすぎて、醜い。嫌いな訳じゃないけれど…憎くてたまらない。このまま絞めて殺してしまえたら、湊はずっと僕だけのものになるのに…嗚呼…醜い自分が湊の瞳に映る。

「いいよ…またやろう」
「約束だからな!嘘つくなよ。」

湊は笑顔で僕の手を握りしめ指切りをした。

「懐かしい行動だな…」
「いいだろ?これをやれば絶対裏切らないんだぜ?」
「本当か?」
「俺の知ってる限りではな!」
「信じらんねぇ〜(笑)」

たわいもない会話。さっきまで自殺行為をした仲には見えないだろう。痛々しい跡が残る間また僕は、自己嫌悪に陥る。湊は別に気にしていないかもしれないが、僕にとっては嫌気が襲う。なんであんなことしてしまったんだろうと…

「そろそろ帰ろうか?」
「うん」

足取りがフラフラした湊は僕に寄りかかりながら夜道を歩く。街灯がポツポツとある道を2人で話しながら行く。静まり返った道はいつもの道に思えなかった。
アパートの階段を上り、部屋に入ると湊は畳の部屋に転がり込んだ。

「なぁ蓮。」
「うん?」
「蓮。れ〜ん〜」
「なんだよ?」
「フフフッ…」
「まったく…」

湊はいつも家に着くと名前を呼ぶ。

返事をすれば、嬉しそうに笑う。何がしたいのか僕には分からないが笑っている顔を見ると無上に愛しく思う。ずっと傍に居たい。

「一緒に寝ようよ…」

湊は纏っていた毛布の端を開け、招き猫のように呼んだ。丸めている体は少し震えていた。

「後で入るよ」
「………」

蓮がそういうと悲しそうな顔をして黙り込んでしまった。湊は構ってあげないと拗ねてしまう。まるで幼い子供だ。蓮が無視をするとのそのそと足の上に頭をのせ、膝枕を求めた。

「フフッ…温かい…」

湊は嬉しそうに笑い、蓮を見た。蓮が微笑みかけると安心したのか、うとうとと眠りについた。湊の体の震えは止まっていた。蓮はそっと優しく湊の頭を撫でた。

「――――…」

湊に小声で云う。蓮は湊の頭を腕にし、眠りについた。







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