Novel

□雪
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息を吐くと白い煙


「寒ッ、」


小刻みに体が震える


駅のホームで電車が来るのを待っている


誰もいない無人駅


しんしんと雪が降ってきた


次第に雪は雨に変わる


体は濡れ、寒さが一段と増えてきた


「まだかな…」


いつ来るのか分からぬ貴男をひたすら待つ


電話をしても繋がらない


「どうしたのかな、」


決して来ないとは考えず、来ると思い続け、体がゆうことをきかなくても、待っている


――馬鹿な奴


「言われなくても分かってるよ」


頭の中で理解しても、
心が理解しない


駅にアナウンスが入る


――1番線に電車が参ります。白線の内側に…


時間になってもやっぱり来なかった貴男


「始めから分かってたよ、」


電車の扉が開き、中に入る


外の雨はまた雪に変わり、積もりそうな勢い


ホームにサイレンが鳴る


プルルルル…


席に座り、外を眺めた


「…仕方ないよ」


電車がゆっくりと動き出す


頭に浮かぶあの時の貴男との思い出


「今日だけ、ね」


頬に一筋の涙


この涙と一緒に貴男を流そう



雪は次第に溶ける







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