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□薄れる意識の中で、
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血の匂いが充満した部屋の中。辺りは物が散乱していて、ところどころ血が飛び散っている。
電気は点いていない為、窓から差し込む月明かりだけが唯一の光だった。
その光で見えるのは、重傷の涯くん。お腹の切り傷を押さえて壁にもたれかかる無表情の涯くんだけが光に照らされていた。
その涯くんは虚ろな瞳でどこか遠くを見ていた。
「涯くん…痛いよね…?」
「………」
「俺を嫌いになっちゃった…?」
光を宿さない無機質な瞳が俺を映す。そう思えば嬉しいはずなのに。
俺は予想外にも悲しかった。その証拠にボロボロ涙が溢れ出ていた。
「(俺が望んだのはこんなのじゃない)」
涯くんの全部を見せて欲しかった。
笑う涯くん。怒る涯くん。悲しむ涯くん。照れる涯くん。…歪む涯くん。
全部全部俺のもの。涯くんの全部が欲しかったんだ。それなのに、俺は今全部を失ったみたいだね。
「涯くんごめんっ…、本当にごめんね…っ!」
頭を下げたら涯くんは戻ってきてくれる?そんなわけないだろ。
分かってても俺は何度も頭を下げた。それをすることでちょっとでも俺の罪を償いたかった。
「…かい…」
「え…」
小さく涯くんの声が聞こえた。恐る恐る顔を上げると、涯くんが何か言いたげに口を開いた。
「涯くん俺…!」
「…俺…は…怒って、ない」
「え?」
涯くんは柔らかく笑った。
「宇海に…なら…殺されても、良い…から…っ…」
俺が守らなきゃいけなかったのに。俺が信じなきゃいけなかったのに。
どうして俺は、歪んだ愛なんて求めたんだろう。
「 」
そんな俺に涯くんは言ってくれた。だから俺も涙を拭ってそれに答えた。
「うん、俺もだよ涯くん」
そして涯くんはまた柔らかく笑って、目を閉じた。
薄れる意識の中で、
((君は魔法の言葉を言ってくれた))
* * *
この零は途半端に病んでます。そんで最高潮に病んだときに涯くん殺そうとしちゃって、気づいたら死にかけてたどうしようみたいな。
そしたら涯くん何この子!超心広い!←
柔らかい笑顔が大好きです。ふわっと笑うの。フワ…ッ!とね。
最後涯くんが何言ったのかはお好みでもうそ…げふん、想像してくださいな!