SS

□本当は泣きたかったし叫びたかった
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口の中いっぱいに鉄の味。頬がじんじん痛む。
額の切れた傷口からだらだら血が流れている。鬱陶しい。


「くそガキが!」
「ぐっ…!」


ああ、そうだ。殴られてたんだっけ。
なんとなく閉じてた瞼を無理矢理開いた。
数十人のチンピラが俺を囲んで殴ったり蹴ったり。…何が楽しいのか。


「生意気な目しやがって」


生まれつきだ。


「おい聞いてんのか?返事しろよ」


うるさいな。


「殺されてえのかよ!」


また殴られた。
鉄パイプとかじゃなく素手なだけまだマシなんだろう。麻痺しない程度に痛いけど。血は止まらないしなんだか目の前が霞んで見える。

だけど、腹やら足やら頭やら好きなだけ殴れば良いさ。
そうしたら俺は動けなくなってきっとあの人が助けに来るに違いない。息を切らして長い黒髪を振り乱し、俺の名を呼びながらここに駆けつけてくる。
だってあの人は稀に見ぬ心の優しい人間なんだから。

頭の片隅にそんな期待を抱く自分がいた。来るわけ無いのに。だって俺はついさっき突き放されたんだ。心優しいあの人に。


俺はお前が分かんねえよ…!


そう言って、取り入る隙も無く俺は突き放された。
当然知り合い以下の関係に、他人の関係に戻ったわけだ。他人の為にあの人が動くと思う?いくら優しいあの人でも他人の為に危険を侵しに来るはずが無い。馬鹿か。

頬を殴られ、腹を蹴られ、髪を引っ張られ、首を絞められ。
四方八方から繰り出される攻撃全てに俺は反撃しなかった。
段々意識が薄れていく。ああ、俺は死ぬのか。


「死ね」


どこからか取り出した木片やらナイフやらを構えられ、その瞬間、後悔が押し寄せてきた。

あの時あんな事を言わなければ。あの時あんな事をしなければ。俺はあの人から捨てられる事なんてなかったのかな。


今頃分かっても…遅いのに。


「は…っ」


不意に笑いがこぼれた。
俺は無意識に一生懸命あの人の笑顔を脳裏に思い浮かべていた。そして思い出せば思い出すほど、目頭が熱くなる。


「……え、」


涙が零れ落ちる寸前、聞こえた。


「しげる!」


愛するあの人が俺の名を呼ぶ声を。
そして、俺は意識を失った。





本当は泣きたかったし叫びたかった
(本当にだいすきだったんだ)


その声が本物だったのか、幻聴だったのかはわからなかった。






     * * *
友達が「フルボッコにされるしげるがみたい」と言ってたので。やってみたが撃沈!ごめん!
いったいこれは誰でしょう。しげるじゃないよね。しげるもどきか。

この話はしげる君がカイジさんにふられて、そんな時に外ぶらぶらしてたらチンピラに絡まれて、殴られるがまま殴られるっていう話です。
とりあえずごめんなさい。悲恋系も好きなんだ。
きっとこの後カイジさんが助けに来るよ!←


 

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