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□Please call my name!
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「涯くん涯くんっ」
「ん?」
「俺は誰でしょーう!」
「は?」



顔を上げて宇海を見ると、ニコニコ俺を見つめてた。
「俺は誰」って…こいつ頭良いくせに馬鹿か?…ああ、馬鹿か。
は、と呆れた俺は、しげるから借りていた本を読むのを再開した。



「ちょっ…涯くん無視しないでよ!」
「黙れそんなの自分の心にでも聞いてみろ」
「俺に聞いたって意味ないんだよ…!」
「ぐ…っ」



そう吐き捨てると、宇海に肩を掴まれてぐらぐら頭を揺らされる。
の…脳が揺れる…!
本を落としてから(しげるには後で謝ろう)宇海の腕を掴んで、無理矢理揺らすのを止めた。
この際「涯くんが俺の腕掴んでる!なんか触り方が俺好みだよ!やっべえ興奮してきた!」とか言ってるのは気にしない。気にしたくもない。



「何なんだ…!」
「だから、俺は誰でしょう!」
「誰って…宇海だろ?」
「そうだけど…それは俺の苗字であり俺の一族の名称だろ?そうじゃなくてさ」
「はあ…?」

「俺の名前!」



しばらく沈黙。



「名前がどうした?」
「涯くんに呼んで欲しいんだってば!」
「宇海」
「苗字じゃなくてー!」
「……なんか改めて呼ぼうとすると照れる」
「照れる涯くんもかわい…じゃなくて、お願い涯くん!1回だけでいいから!」



手を合わせてみたり、額を床に擦り付けたりと、一生懸命俺を説得する宇海。「名前を読んで欲しい」という理由でここまで頼み込む宇海は、なんだかそこら辺の女子より女らしい。なんと言うか思考が乙女みたいだ。
思わずふはっと笑う。



「涯くん…!」



宇海は顔を上げた。そして俺の表情を見て、きっと期待を膨らませたんだろう満面の笑顔になった。
俺も自分でも珍しくにこりと微笑んで、



「馬鹿宇海気持ち悪い」
「がっ…!」



勢いよく項垂れる宇海。それを見て、俺はまた笑った。



「ひどいよ涯くーん…」
「気持ち悪いのは事実だろ」
「そんなあっ…うう」



これはしばらく項垂れたままだな。
ため息を吐いて、仕方なく俺は口を開いた。





Please call my name!
(…これで満足しただろ?)(もっと!もっと呼んで!)(1回でいいって言った)(はっ!…お願い涯くん!もう1回だけ、)

俺の名前を呼んでください!






     * * *

最近ヤンデレの方向にばっかり進んでるので、ほのぼのも書きたかったんです。名前ネタはよくあるんですが、どうしても書きたかったんです。
ちょっと強気な涯くんが!←
今は涯くんが私の中でブームです。1番いい子じゃないかなって思う。かわいい!

てかなんかこの零「!」ばっか使ってないか。




 

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