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□傷跡にキスを
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赤色や青色の痣がところどころに散らばっていて、綺麗だとも思った。けれどそれ以上にショックを覚えた。
原因を問い詰めようとしげるの腕を掴んだら、微妙に顔を歪ませた。悪いと呟いて掴む力を緩める。



「何があったんだ…!」
「何でもありませんよ」



生々しいその傷はしげるの白い肌によく映えていて、余計痛々しく見えた。
にこりと笑うしげるの口元にも傷があって、笑うのさえ辛そうに見える。無理して笑わなくてもいいのに。
すでに固まっている鼻血をぐずぐず拭い取ろうとするが、なかなか取れないからかしげるは拭い取ることをを諦めた。



「とりあえず洗面所に行くぞ」



血を洗い流そう。

そう言って腕を引けば、文句を言うことなくすんなり一緒に来てくれた。
すぐに温い湯を出して、それで洗い流す。やはり沁みるみたいだ。また顔を歪めた。



「……」
「……」
「(話してくれないのか…?)」



目で訴えかける。ひたすら訴えかける。ちらちら顔色を伺っていたおかげか、



「…はぁ…話しますよ」



しげるは観念した。



「いつも通り雀荘に行って、いつも通り勝ったんですよ」
「うん…」
「そしたら『いかさまだ!』って言われて…殴られて…まぁそこまではいつもと同じなんだけど」
「……」
「今日は襲われたんですよ」
「どーゆー意味…だよ」



一瞬息をすることを忘れていた。
同時に、頭のどこかで「ああ、聞かなければ良かったなあ」と思った。



「単純に言えばレイプ」
「…は…?」
「今までにも何回かあったんですよね、俺みたいな子供の男相手に何がいいんだか…」
「…っ」



知らなかった現実と、しげるへの罪悪感に、涙が出そうになった。
そんな俺を見て、しげるが「気にしないで」と慰めの言葉をかける。俺が慰められてどうするんだよ…!



「しげるごめん、」
「…なんでカイジさんがあやまるの」
「っごめん…」
「カイジさんは悪くないでしょ…」



ふふ、と笑って抱きついてくるしげる。微妙に濡れてるのなんて気にしない。



「じゃあカイジさん、消毒して」
「あ、そうだな。じゃあ救急箱…」
「そうじゃなくて」
「え?」



しげるの澄んだ黒い瞳と、ばっちり目が合った。



「怪我してる所全部にキスしてよ」
「…は!?」
「…ダメですか…?」
「う、」



不安げな表情されたら、嫌なんて言えなくなる。
羞恥心を捨てるんだ…覚悟を決めろ…!
決意を固めて、しげるの頬と右手に手を添えた。



「……」



肩。右手の甲。首元。



「……」



額。目元。頬。口元。



「……」



怪我してると思われる箇所全てに口付けを落としていく。中には肌を強く吸った痕もあって、涙と憎しみが溢れ出しそうになった。
キスし終わって「これでいいのか」と聞けば、しげるは満足したのだろうか、



「ありがとう」



また微笑んで、抱きついてきた。今度は俺も抱き締め返す。強く強く抱き締め返す。



しげる、これからはちゃんと守るから。俺が守ってみせるから。だから無理して笑わなくていいんだぞ。



そう言って、俺はまたキスをした。
しげるは小さく「うん」と頷いた。




傷跡にキスを
(次からは俺も一緒に雀荘行くから)(大丈夫ですよ)(大丈夫じゃねぇだろ…!)


その傷が証。







     * * *

いろいろごめんなさい。しげる好きな人とか本当にごめんなさい。
そしてキス表現を初めて使いました。ううむ、恥ずかしい。




 

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