YUME

□especially for you
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「……はあ…」


13年間生きてきて、初めて作ったチョコレート。チョコレートと呼ぶには難しいくらい不恰好だし、味も保障できるか分からない。
でも精一杯愛情だけは詰め込んだんだけどな。


「(渡せなかった…)」


紙袋の紐を握り締めて、また溜め息を吐く。そして帰路についていた足を再び動かし始めた。


「(赤木くんいくつチョコもらったのかなぁ…)」


赤色の太陽を背にとぼとぼ歩く。考えるのはクラスで人気な彼のこと。


「(そういえばえりなちゃんもあみちゃんもあげてたなぁ…私もあげとくべきだったかなぁ…)」


でも彼女たちと同一化して欲しくなかった。多くの取り巻きの1人だと。外見のみを判断して好きになったんじゃないと、分かって欲しかった。
だからあえて、チョコレートを渡さなかったが…それで良かったんだろうか。


「(でも渡さないよりは渡したほうが良かったよなぁ…)」


自己嫌悪は止まらない。涙こそ出てこないが、だんだん悲しくなってきた。


「…これどうしよ」


ふと疑問が浮かんだ。
本命チョコを誰かに義理と言って渡すわけにもいかないし、かと言って自分で食べるのもなんだか嫌だ。
だったらこのチョコレートはどうすれば。


「それくれないの」
「え?…あ、あか…っ!!」


振り向けば、赤木くんが立ってた。白色の髪が太陽に反射して少し眩しい。
赤木くんの右手には紙袋が握られていて、その中身はきっとチョコレートだろう。多すぎて若干溢れている。


「俺ちょっと期待してたんだけど…」
「え!?だっ…て、」


ほら、私料理初めてだから美味しいか分かんないし!えりなちゃんとかあみちゃんのチョコの方が絶対美味しいよ!それに赤木くんいっぱいチョコ貰ったんでしょ?今更私のチョコなんて貰わなくても十分だよ!は…鼻血止まんなくなっちゃうよ!


「関係ねぇな…あんたの」
「赤木くんってずるいよね」
「…なんで」


赤木くんの言葉を遮ってそう言うと、赤木くんは思ったとおり不満そうな表情をした。そりゃまあいきなり「ずるい」とか言われたら不服だろう。


「なんで中途半端に優しいの?えりなちゃんたちには口も利かないくせに」


自惚れちゃうよ!
そんなこと考えてた阿保な私に、赤木くんはさらりと言った。


「…なんか、うちの犬に似てるんだよね」
「…へ、犬…?」
「そう、犬。なんとなく似てて可愛げあるんだよね…あんた」


真顔で言うあたり、赤木くんはきっと本気でそう思ってたんだ。
え、ちょ…待って。犬?犬に似てたから今まで他の子よりは仲良くしてくれてたの?…喜ぶべきか悲しむべきか分かんないよ。


「まあ俺のこと嫌いならそれでもいいよ。それじゃ」
「まっ…待って…!」
「…なに?」


仲良くしてくれてた理由は素直に喜べないけど…それでも私は、


「チョコ…貰ってくれる?」


君のことが好きだから!





especially for you
特別な君のために作ったんだ!…犬じゃなくって女の子としてみてね?




 

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